Rock

TMG / 「TMG Ⅰ」

 

TMG
TMG Ⅰ
2004

 

TMG?

Michael SchenkerがThe Michael Schenker Group”MSG”として同名アルバムをリリースしたのが1980年でした。邦題としてはなんともシンプルな「神」という言葉が使われました。そしてそれから24年後、Tak MatsumotoによるTak Matsumoto Group”TMG”の1stがリリースされました。松本は無論Michael Schenkerに多大な影響を受けていますが、本作においては取り立ててSchenkerの音楽性に追随していこう、という意義があったわけではないと思われます。

招聘されたのはMr.Bigからエリック・マーティン(Vo)、Night Rangerからジャック・ブレイズ(Ba)、WhitesnakeやSLASH、B’zなどの屋台骨を務めてきたブライアン・ティッシー(Dr)、Lenny Kravitzでも叩いていたシンディ・ブラックマン(Dr)でした。この面々からある程度のサウンドは想像がつきやすいバンドではありましたが、そこで鳴らされていたのはあまりにシンプル、つまりオーソドックスなハードロックでした。奇を衒わず、自身のキャリアをHR寄りの場所で放出させてみよう、といった心意気に満ちたものでした。松本が主軸としてやってきたB’zは、意外にもHR的軸の中にファンクやフュージョン(ソロ含め)、そして勿論歌謡曲の要素も入っており、2000年代を境にジャンル:B’zのようなキャリア形成に拍車がかかったように思えます。しかし本作が描くのは王道のHRで、思いの外B’zとの差別化は図られているように感じます。本当に松本がやりたくてやりたくて堪らなかった感が、快活なリフから感じられます。

 

松本の陽的HR志向が前面に

まず本作が感じさせるのは日本的なオリエンタリズムの情緒。しかし一方でアメリカン・ハードロック由来のメロディアスなサウンドを綯交ぜにし、洋楽であり洋楽でないという矛盾的Cool Japanを構築したように思えます。そしてその掴みとしては完璧なM1「OH JAPAN – OUR TIME IS NOW」。ポップで華やかな陽的HRと、エリックが主として表現する野性的なダイナミズム、そして和洋折衷のカラーを決定づけた、本作に相応しいオープニングです。そしてエリックの声の抜けが気持ちの良いM2「Everything Passes Away」では、エリックが得意とするDavid Coverdale由来のソウルフルな声を聴かせてくれます。

また、全体を通して70年代的なHRのアプローチというよりも、少し後ろにずれた80年代的アプローチが至る所にみられ、アグレッシブでパワフルなカラっとしたサウンドが鳴らされているのも印象的です。そして桜散る日本の風景をも思わせる印象的なイントロダクションからスタートするM6「THE GREATEST SHOW ON EARTH」。ブレイクありきのパワフルなロックンロールが彩る本作のハイライト的展開が嬉しいです。

しかしながら、語弊があるかもしれませんが、本作ではB’zで描くロック以上の新しいことに挑んでいるわけではありません。それは、松本がやりたいことをやりたいように、そしてシンプルに創造しているからで、本作が音楽的な発明のフォーマットになり得たわけではないことも追記したく思います。一方で松本がギタリストのみならず、コンポーザー、そして生粋のメロディの人である、ということは、本作そのサウンドとメロディそのものから得られる客観的な情報で、そこにビジネスマンとしての萌芽を強く感じます。

そしてラスト・ナンバーに据えられたM14「NEVER GOOD-BYE」。その言葉通り、最後じゃないなら是非ともまた始動させてほしい限りです。

 

松本孝弘「華」

B’z 「ELEVEN」

B’z「IN THE LIFE」


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