Rock

Queen of the Stone Age「…Like Clockwork」

 

Queen of the Stone Age
…Like Clockwork
2013

 

一般受けしないストレートなアメリカン・ハード

Queens of the Stone Ageはストーナーロックを牽引したKyussのジョシュ・オムを中心に結成されたバンドです。Zeppelin、J・P・ジョーンズを招聘したバンドにはThem Crooked Vulturesがありますが、TCVがアッパーなロックを中心に鳴らしていたのに対し、QOTSAではよりスロー~ミドルのグルーヴ重視サウンドが表現され、じわりじわりと熱く響くロックの熱が鳴らされています。98年にデビューし、2000年には「Rated R」をリリースしています。

本作に参加しているゲストミュージシャンはエルトン・ジョンをはじめ、Foo Fighters:デイヴ・グロール、Arctic Monkeys:アレックス・ターナー、Nine Inch Nails:トレント・レズナー、The Mars Volta:ジョン・セオドアなどの錚々たる面々です。

全体のサウンドとしては、低い位置で鳴らされるリフを中核に、ドライヴ感のあるストレートなアメリカン・ハードロックが抽出され提示されています。一方で、一見対極にあると思われるメロウでメランコリックな感傷すらも発しており、アンダーグラウンドな気質でありながら極めて素晴らしいアルバムです。The Black Keys然り、ヴィジュアルの冴えないおじさんたちがひたすらサウンドで勝負していることの”格好良さ”を全面で受け止めることのできる名盤が本作です。

 

2010年代を代表する名盤

Pink Floyd的なサウンドスケープからデイヴのドラムスで幕を開けるのがM1「Keep Your Eyes Pleeled」です。長きに渡りストーナーを牽引してきたからこそ可能な深く沈んだサウンドが、強烈に胸を貫きます。特筆すべきはジョシュ・オムの縦横無尽に翔るギターそのもので、ミドルテンポでありながらキメの場所はきちんとキメてくるバンドとしてのプライドを感じます。

そして次曲M2「I Sat by the Ocean」へ至ります。アルバムのオープニングとしてはスロースタートですが、心の深くにじっくりと届いてくるロックの放熱が、文学的な香りさえも放ちます。

ミドルなテンポでメロディックなサウンドが並ぶ中、ジョシュ・オムにとってのクラシックを鳴らすのが、本作の核となり得るM5「My God Is the Sun」です。エッジの効いたリフが貫く楽曲ですが、威風堂々とした佇まいは「Feel Good Hit oh the Summer」に代わり彼らの代表曲になっても違和感がありません。

Arctic Monkeysの新曲としてリリースされてもおかしくないM6「Kalopisa」、ファンキーなリズムにアメリカン・ハードを突っ込んだM8「Smooth Sailing」を通りタイトルトラックのM10「…Like Clockwork」でアルバムは大団円を飾ります。ピアノをバックに、ジョシュ・オムが歌を紡いでいくバラードですが、ドラマティックな展開を魅せます。決して売れ線のバラードではありませんが、ギルモアばりのギターを聴かせてくれる楽曲は、地に足の着いた強度を誇り、時代の波に流されない堅牢な「ロック」を届けてくれます。

深夜にウイスキーでも吞みながら、聴いてみてほしい一作です。

 


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