Greta Van Fleet
The Battle at Garden’s Gate
2021
独自性とクラシックHRの狭間で
2017年のアルバム「From the Fires」からM1「Safari Song」、そしてM5「Highway Tune」を生み出し、翌18年「Anthem of the Peaceful Army」からM3「When the curtain falls」をリリース。こういったサウンド形態としては異例の商業的成功を収めたGreta Van Fleet。モダンなフックの中に感じさせるのは、やはり70年代HRの風でした。中でもVo.ジョシュ・キスカはやはりZeppelin、ロバート・プラントと比較して語られることが多かったように思います。加えてそのサウンドそのものも、源流はやはり70年代HRで、彼らの若きエナジーはあまりに重たいLed Zeppelinというバンドに吸収されつつありました。
すこぶる評価の高かった1st以降、彼らはどうしても”Zeppelin”から逃れることが極めて難しい立ち位置にありましたし、それ故、Gretaらしさ:つまりその「独自性」を打ち出すことに苦悩したように見えます。
一方、本作から感じ取れるのはZeppelinが積極的に描いてこなかった社会的なメッセージを伴ったものです。また、あくまでもHR/HM全体の潮流からすればややポップで、更にはモダンなフックを多用し、現代に再生産・再定義をしてみようという意義がありました。
期待は大きいが
アコースティックな響きの中にヴィンテージ的ロックンロールを詰め込んだM1「Heat Above」で幕を開ける本作。大作主義とコンパクト、その両方の良い所だけを抽出したサウンドです。M2「My Way, Soon」~M3「Broken Bells」におけるGソロは、完全にジミー・ペイジを研究して演奏されたであろう構成になっています。M4でもやはりジミー・ペイジ的なフックが随所に聴かれ、ドラムスもジョン・ボーナム、ベースもジョン・P・ジョーンズを思わせる出来です。一方でロバート・プラントからはあまり想像のつかない低音の声に魅力が詰まったジョシュの「良さ」が出ています。
また本作の核となるM5「Age of Machine」はBlack Sabbath的なヘヴィネスの中に、ブルーズのリズムを落とし込み、アメリカン・ハードに寄った楽曲です。こういったサウンドは、やはりUKよりもUSロックバンドの強みの一つではないかと思います。Kyussが牽引したストーナーロック的な響きを持つ一方で、メロディの弱さは否めない楽曲となっています。
個人的には残念ながら、70年代HRバンドのインパクトに勝るものが感じられず、代替品としてのGreta Van Fleetに成り下がってしまうことに恐れを抱いてしまうサウンドでした。故に、このGreta Van Fleetというバンドが直面するのは、意外にも茨の道で、「Zep的アプローチから距離を取ってしまえば現在Greta Van Fleetを聴いているメイン層が離れて行ってしまう」という、音楽、ロックにおける全体の構造的な問題です。それほどまでに今のHRは瀕死の状態にあるということも分かります。一方で、この瀕死のHRの中で生き続けるには、70年代HRのフォロワー以外の人にも広く聴いてもらう必要があり、そのことの革新性の「幅」のようなものが欲しいとも思います。
CONTACT
ワダアサト
OMOTE TO URA E-SHOP