Rock

Audioslave「Audioslave」

 

Audioslave
Audioslave
2002

 

脳内を貫く徹底的なヘヴィネス

Rage Against the MachineよりVo.ザック・デ・ラ・ロッチャを除いたリズム隊と、Soundgardenからクリス・コーネル(Vo.)を招聘したバンドがこのオーディオスレイヴであり、本作は彼らの1stアルバムとなりました。「オーディオ」の「スレイヴ(=奴隷)」と名付けられたこのバンドが本作をリリースしたのは、RATMが活動を休止した二年後でした。

話題性は抜群、名を連ねる面々もビッグネームばかりだったこのバンドは、単なるロッカーのお遊戯と捉えられてもおかしくはない状態でした。しかし、そのサウンドはレイジとは趣を異ならせたド直球のヘヴィネスを宿したハードロックでした。ツェッペリンをはじめとした70年代HRへの憧憬を隠さず、しかしレイジが持っているファンクネスを凡そ排除したアルバムでした。

 

クリス・コーネル×トム・モレロ

トム・モレロが掻き立てる軍用ヘリのサウンドスケープからスタートするM1「Cochise」。刹那重たいリフが重なり、アルバムのOPナンバーとしてこれ以上のない幕開けを予感させます。本作の楽曲の中核を成すのは、もれなくトム・モレロのリフであり、それが主導する形で楽曲全体のグルーヴを引っ張っていく感覚があります。

お得意のワウによる揺らぎと、通底するヘヴィネスを武器にシンプルかつ聡明に構築された楽曲を経て、米国が誇るハードロックバンドAerosmithにも近しいジャムがクールなM3「Gasoline」へとアルバムは歩みを進めます。

そして本作の核を成すM5「Like a Stone」へと至ります。RATMとSoundgardenには表現する必要のなかった暗澹たる悲哀と、深い懊悩を吐露するこの楽曲は、言うまでもなく2000年代のロック・スタンダードたり得ることに疑いようはありません。Dr.ブラッド・ウィルクのドラミングはストイックに冴え、クリスの歌唱が静かにしかし熱く燃えている楽曲です。目を閉じると、深淵の底に沈んでいくかのような魔力を宿し、尚も消極的な自殺へ至ってしまいそうな、そういった要素を持つ美しきナンバーです。

一方で、この本作がリリースされた直後には「新世紀のツェッペリン」のような覚書が利用されることもありましたが、恐ろしいのは本作が懐古趣味的な側面のみに留まらず、全体のプロダクションが「00年代」のサウンドになっていることです。そして90年代オルタナティヴを経たメロウネスを手にしたアルバムになったとも言い換えられます。

そしてアルバムはM7「Shadow On the Sun」へ至ります。Like a Stoneでも”I’ll wait for you there, alone, alone”と歌われますが、この楽曲でも再び”People die alone”という言葉が登場します。内なる心の在り様をシャウトに近い形で吐露し、ロックの持つ魔力を充満・放出させる様は本当に圧巻です。アウトロに至るリフレイン的なジャムも素晴らしく、アメリカン・ハードロックの極まる恍惚を抽出しているかのようです。

本作唯一のアップナンバーM10「Hypnotize」を経て、M14「The Last Remaining Light」でアルバムは幕を下ろします。

90年代の「怒り」を変容させ、しかしそれと地続きに存在する混沌を、ハードロックという形で世に投げかけてみたオーディオスレイヴの「Audioslave」。是非とも一人で聴いてほしいアルバムです。

 

Soundgarden「Badmotorfinger」

Rage Against the Machine「Rage Against the Machine」


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