日本にはバイモ属のいわゆる「コバイモ」と呼ばれる花が10種生育しています。高山帯などに見られるクロユリ(ミヤマクロユリ)などもバイモ属の一種ですが、本記事は「コバイモ」に限り執筆します。
そしてそれらコバイモと呼ばれる10種のうち、山梨県内に生育する植物は
・カイコバイモ
・コシノコバイモ
の2種となります。
甲斐小貝母(カイコバイモ)
Fritillaria kaiensis
環境省RDB:絶滅危惧lB類
山梨県RDB:絶滅危惧lA類
上図は甲斐小貝母(カイコバイモ)で、学名の種小名に”kaiensis”が付くことから分かる通り、甲斐国(=山梨)と、静岡のごく一部に限局して咲く希少な花です。一部、東京都にも生育しますが、こちらは植栽されたものの子孫とする説もあり、厳密な生育地としては疑問が残ります。
花期は3月~4月上旬であり、花弁は広鐘形、花被片は6個存在します。コシノよりも、花被片の突起部が緩やかにカーブし、清楚で気品ある花姿となります。
山梨県内の個体数は極めて少なく、環境省RDBでは絶滅危惧lB類、山梨県RDBでは絶滅危惧lA類となります。
また、2019年には日本の絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(=種の保存法)による、国内希少野生動植物種に指定され、移植や採取が禁止されています(環境大臣の許可が必要)。
しかし、大変残念なことに、それを理解できない愚かな人々によって、常に盗掘の危険に晒されているのが本種であり、まさに絶滅寸前種と言い換えても、違和感がない植物になってしまっています。
続いて、山梨県内に自生するコシノコバイモを確認してきました。
越の小貝母(コシノコバイモ)
F. koidzumiana
環境省RDB:ー
山梨県RDB:絶滅危惧lA類
コシノコバイモのコシノ(越の)は北陸(新潟)を指す言葉で、石川県を中心とする日本海側、静岡・岐阜・愛知・山梨県に分布します。
カイコバイモに比べ、花被片の色はやや暗く、独特の模様が出現します。花期はカイコバイモと同じく3月~4月上旬で、広鐘形の突起部が強く突き出し、より角張った花被片が特徴となります。
また、上図のように葉はそれなりに確認でき、カイコバイモよりは個体数・分布域ともに多いと考えてよいかと思います。しかしながら、根本的に個体数が少ないことから絶滅危惧lA類に分類されています。
東一華(アズマイチゲ)
Anemone raddeana
環境省RDB:ー
山梨県RDB:絶滅危惧lB類
その他、スプリング・エフェメラルの花々が続々と咲き出してきていました。
アズマイチゲはセツブンソウと並んでその代表的な花の一つで、陽がダイレクトに当たらなければ開いてくれない子です。山梨県内の個体数はあまり多くなく、絶滅危惧lB類に指定されています。確認しに行った場所では、花(厳密には咢片)を付けている個体より、葉の数の方が多かったように思われました。
続々と春の花が咲き出してきましたが、この3月の低温と雪によりややずれて咲くかな、と考えています。