同い年のイチョウ
まず下の画像をご覧ください。
これはどちらも同じ親木から実生で育てたイチョウです。つまりどちらも同じ親から生まれた兄弟、或いは姉妹 / 兄妹です。同じ時(2022年の春)に発芽し、水やりのスケジュール、育てる環境、それらも全て同じです。
一体これらのどちらが盆栽で、どちらが鉢植えなのか、分かる方はおられるでしょうか?
そうです。左が盆栽、右が鉢植えです。
自分の目や感覚では、どちらが盆栽か何となく理解はできるかもしれませんが、一方でその違いを明確に理解し、言語化できる方はそう多くないはずです。
鉢植えの鑑賞の目的
「鉢植え」とは要するに「植木」でもあり、観葉植物を柔らかくした言い方でもあります。その主な鑑賞の目的は「植物」そのもので、植物が生き生きと育つように、その植物の性質を引き出すことです。
植木(引用:kakaku.com)
鉢植えは、草花、樹木、全てに適用することができ、あくまでも「植物」が主役となります。
盆栽の鑑賞の目的
対して「盆栽」というのは、鉢を含めた全ての景色を大自然として投影し、景色そのものを楽しむものです。自然というものは、必ずしも綺麗ではなく、時に枯れた樹があり、時に苔むすものです。そこに存在するのは、確実に木々が経てきた「時間」そのものです。
盆栽(引用:大宮盆栽美術館)
つまり、鉢植えが「植物を主役とする」のに対し、盆栽は「鉢や鉢上の景色をも含めたもの」と言い換えることが出来ます。どちらが優れていて、どちらが劣る、ということではありませんが、盆栽は「植物と鉢を含めた景色をデザインすること」と言えます。
また、鉢植え/植木では、植物の生長に合わせて鉢の大きさを一回り大きくしていきますが、盆栽では明確に目指す樹形があるため、鉢は植木よりも小さい傾向にあります。
文化の出自の差異
ここで、それぞれの文化的背景の出自を考えてみます。
鉢植えは、1970年頃西洋から日本に持ち込まれたものです。元々、針葉樹を鉢に植えることにより「繁栄」(=一年中緑を保つことから)、「長寿」などの価値観を主に持っていました。
日本では江戸時代以降に広がりを見せていき、19世紀頃の産業革命によって、育成するのが難しい植物をも自室で楽しめるようになりました。観葉植物が日本で広がった背景には、当時の都市化により、街の緑が失われ、「家の中でも植物を楽しみたい」というニーズが生まれたことによります。
一方盆栽は、中国より持ち込まれた「盆景」というものが、日本独自の変化を遂げていったものです。故に、上述した西洋的な価値観とは、その誕生の背景を異ならせています。(参考:「盆栽は日本的な引き算の美学」)
「意図」を表現する
鉢植えが「花弁が美しい」だとか「樹が元気」という、植物そのものにフォーカスを当てている一方で、盆栽における重要なポイントは「意図」の有無です。謂わば、書道と同じように、Aという書家(仕立て人)がいれば、A’という独自性・作家性が生まれます。
盆栽においては、まったく同じ親から生まれた植物でも、手入れをする人によって、その姿は大きく変貌していきます。大きく奔放に育てる人もいれば、小さく小さく切り戻して作っていく人もいます。そこが一つの面白さであり、盆栽はその人を表します。
知れば知るほど面白い盆栽の世界。皆様も是非、お家で一鉢育ててみてはいかがでしょうか。
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