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傑作と呼ぶべき邦画10

 

今、映画は映画館だけで観る娯楽ではなくなった。スマートフォンやタブレットで、まるで映画を持ち運ぶように気軽に観られるものとなった。「邦画はつまらない」という声が巷ではよく挙げられる常套句ではあるが、実際のところ本当に面白い邦画はたくさん存在する。

そこで今回は月末の弊社のコンテンツ「ART」カテゴリを「邦画」にして、傑作邦画を10作ご紹介していく。また、今回ピックアップした基準は媚びていない邦画である。またここでは各映画のあらすじは書かない。

 

①愛のむきだし

②怒り

③千と千尋の神隠し

④アイアムアヒーロー

⑤冷たい熱帯魚

⑥渇き。

⑦サバイバルファミリー

⑧葛城事件

⑨CURE

⑩凶悪

 

 

①愛のむきだし


《園子温》監督の超・長編映画で、上映時間は凡そ4時間にも及ぶ大作。はっきり言って、この映画及び園監督作品には「合う・合わない」があるので、その辺りはご承知願いたい。

愛・宗教・コメディ・アクション・学園・エロ…そういった要素をまるごと詰め込んだ作品で、中身はごった煮のような状態。しかし「観れちゃう」映画である。画質もB級映画のそれのようで、アングル、台詞、それら全てが映画大好きな人が好き勝手気ままに撮りました、という印象。前菜にお刺身、椀物というような上品さのかけらもない「はい!ラーメン二郎にカツ丼、カレーライスもあるよ!」という映画である。

そして園子温にありがちな「勃起こそ愛だ」という作家性と強さに加え、爽やかなドラマとは正反対のえぐみある作品。

 

 

②怒り


吉田修一原作の小説を《李相日》監督が映画化した作品。キャストはこれでもかと言うほど豪華で、製作コストはかなり高そう。タイトルに「怒り」が据えられているものの、この映画は「怒り」を題材にした映画ではない。いわばコンセプト的なものは「人を信じること、疑うこと」であり、真正面からその永遠の課題に向き合った作品と言える。

────隣の友人、恋人は殺人犯かもしれない…といった逃れようのない恐怖。「人を信じたい」「人を信じてもいいんじゃないか」ということの難しさを「怒り」というフィルターを通して描きあげる渾身の作品となっている。

また、特筆すべきは演者の演技で、特に宮崎あおいのエロティシズムな肉感と性愛的衝動、広瀬すずの胸が押しつぶされるような演技には脱帽、まさに白眉と言える。全体を通して全ての演者の演技は凄まじく、見終わった後にはたっぷり疲れ、虚脱感が襲う。

 

 

③千と千尋の神隠し


恐らく日本中の誰もが知る監督《宮崎駿》の、誰もが知る作品「千と千尋の神隠し」をピックアップ。「しんぼる」を監督した某監督はこき下ろしていたし、宮崎作品には確かに批判が常に付きまとっている。しかし、好き嫌いを置いておいて、これほどまでにキャラが突出した映画はこれまでにあっただろうか。

宮崎駿の生み出す超独自のキャラ─────ハク、カオナシ、湯婆婆、釜爺…こういった様々なキャラクターを隣の人に話せば、理解してもらえる。このこと自体は素晴らしいことだし、商業的にも爆発的ヒットを飾った。

ところでこの作品、子供の頃はなんとなく理解できていたのに、大人になるにつれて理解ができなくなる、なんてことはないだろうか。つまりは観る度にその解釈は大きく変わり、新しい発見がある。こんな映画はなかなかない。そして何より世界でも最も「おにぎりが食べたくなる映画」であることは間違いない。大人になったアナタこそ、是非もう一度観てほしい。

 

 

④アイアムアヒーロー


《佐藤信介》監督による、ゾンビ映画。この手のゾンビ映画は、近年勢いを増し、半ば量産的に生産されている。そんな中でも、邦画におけるゾンビ映画はかねてより酷評されていた。というのも海外の映画と比較すると遥かにかけられる予算が少ないことなどが遠因となり、「名作」という判子を押されることはなかった。

しかし、この映画はTV局が製作に関わっていない点から、俗的な表現ではなく、まさに「圧倒的」な恐怖を見事に再現している。「ただのスプラッター映画」という声もあるが、そう、まさにただのスプラッター映画なのだ。しかしそのスプラッターも突き詰めれば大変に面白くなる。ここまでの作品を作り上げることが出来るということは、日本のゾンビ映画、エンターテイメント映画に対する希望である。

 

 

⑤冷たい熱帯魚


二作目となってしまった《園子温》監督の衝撃的な作品。映画を評価する専門家、映画フリークからも軒並み評価の高いこの作品は、日本映画における一つの到達点であり、狂気とエロティシズムをない交ぜにした永久・不朽の名作。

冒頭の「A SONO SHION FILM」という文字から、園の最高傑作であることが伝わると共に、各シーンに流れる音響、映像、演技、それら全てが素晴らしい。園映画が嫌いな方も、必ず画面から目を離すことが不可能になる。

とにかくグロい、エロいシーンの連続ではあるものの、そこには狂気のみならず少しコミカライズされた映像も入っていて、園映画としては究極的なまでのエンターテイメント作品に仕上がっている。淀んでいる時間も少なくあっという間の2時間。でんでん演じる村田の謂わば「がはは系おやじ」の出来も素晴らしいし、何より実話を基にしたストーリーであることがただただ驚き。不謹慎は承知で観てほしい。

 

 

⑥渇き。


《中島哲也》監督の問題作である「渇き。」をピックアップ。小松菜奈が主演を務め、スクリーンデビューを果たしたことでも話題となった今作。原作は深町秋生の「果てしなき渇き」である。原作も映画作品もとある事件を基に製作されているとのことだが、ここに書くと消されそうなので詳細はどうぞお調べください。

中島作品の表現は極めてCM的だと評されているため、こちらも園作品と同様「合う・合わない」が確実にある。そのため画面が切り替わる表現、音楽が主になる表現、とっちらかった表現、抽象的な表現が苦手な方には合わないだろう。

しかし原作「果てしなき渇き」を呼んだ後に観ると、これが大変に面白くなる。まさに中島マジックとも言うべき現象は驚き。

 

 

⑦サバイバルファミリー


《矢口史靖》監督作品で、エンターテイメントまっしぐらの作品。ある日突然電気が使えなくなったらどうなるか────というシチュエーションで進行していく。主演は人の良いお父さんにぴったりの小日向文世が務め、その奥さんを深津絵里が務める。

脚本的には現実と乖離している部分も見受けられるが、そもそも表現物というのが必ずしもリアルに沿っていなければならないとは限らない。それに矢口史靖の魅せる独自の世界観は、まさに必見。

コメディ要素をふんだんに取り入れながらも、最後に向けて心がじんわり温まっていくストーリーで、偽善的でない人々の本質が描かれている。他の9本で挙げるようなセンセーショナルな映画ではないものの、そういった強い表現が苦手な方には本当にオススメできる映画だ。

 

 

⑧葛城事件


《赤堀雅秋》監督作品による、本人主宰の劇団「THE SHAMPOO HAT」の同名劇を映画化した作品である。あまり大規模公開はされていないものの、映画フリークの評判は軒並み高い。登場する役者陣の全ての裏側に闇があり、それを感じさせる演技には脱帽。

実際の事件に基づいているものであると同時に、それを監督なりの脚色でもって作り上げた意欲的な作品。また、私たちはこういった実際の事件に際し、被害者に着目することはあっても、加害者一家に着目することはほとんどない。しかしこの映画を観てからは、加害者一家にも目を向けてもいいのではないか、という思いを抱く。

全ては絶望であるし、「家族」という病巣を描く、現代社会に一石を投ずる作品。

 

 

⑨CURE


《黒沢清》監督の代表作品と言っても過言ではない本作。またサイコ・サスペンスものでありながらも、独自の評価を受けたこの作品は、まさに奇妙で陰鬱的だ。

また役所広司と萩原聖人が繰り広げる、説明を伴わない極めて映画的で難解な作風にはファンも多い。物事の解釈を観ている者に委ねているものの、本作のテーマは実にシンプルである。人が本来持つ凶暴的な暴力性を、黒澤清流の解釈・演出で魅せていく。

我々の「普通」の暮らしは何の上に成り立っているのか。そしてそれはどのようにして綻びが生じ、崩壊していくのか。その本質に真正面から向き合った傑作。

 

 

⑩凶悪


《白石和彌》監督による社会派サスペンス映画。この映画はとにかく面白く、まったくと言っていいほど観る人を退屈にさせない。「人の命を金に換える錬金術師」とそれを追う記者の物語だ。リリーフランキーとピエール瀧の魅せる演技、山田孝之の傍観的でありながらも事件にのめりこんでいく様がリアルで、「人の闇」を痛烈に見せつけられる。

「悪」には「正義」をもって制すが、「正義」には歯止めがきかない。それぞれにそれぞれの価値観があるように、正義にだって幾つも種類がある。そしてその構造は「社会」という部分では常にぐらぐらと揺らいでいるものだ。

この物語の犯人を演じるリリーフランキーとピエール瀧は、間違いなく「狂って」おり、サイコパシー人格の持ち主であるとされるが、私にはどうもそう思えない、純な人間としての一面が見れる。

 

 

いかがだったでしょうか。現在はAmazon Primeなどの有料サービスで、これまでの映画を観ることができる。時間が作れた方は、是非一度観てみてほしい。何よりも「百聞は一見に如かず」である。


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