Soundgarden
Badmotorfinger
1991
稀有なるヴォーカリスト
先立って書いておきたく思いますが、僕はこのバンドのヴォーカリスト、クリス・コーネルが取り立てて好きなヴォーカリストです。Zepロバート・プラントや、Whitesnakeデヴィッド・カヴァーデール、時にSabbath、Rainbowディオを想像させながら怒り、そして、恐らくは00~10年代USのロックバンドにもとめどない影響を与えたヴォーカリストでした。残念ながらその生涯は自殺という結末で幕を下ろしましたが、00~10年代のオルタナ、ポップ・パンク以降のロックとの架け橋になってくれたのもクリス・コーネルでした。
70年代のHR/HMフォロワーには怒られるかもしれないですが、その声にはリアリティがあって、個人的にはロバート・プラントやカヴァーデールよりも魅力を感じました。また、同時期に活躍したバンドの代表格にはNirvanaやPearl Jamらがおり、それらをまとめて一連の”グランジ・ムーヴメント”とする動きもありましたが、僕はやはりSoundgarden、ひいてはクリス・コーネルの強烈なSympathizerであると言えます。故に、97年にSoundgardenとしての活動を終えた後、RATMのメンバーを迎えて結成されたAudioslave、更には彼のソロワークまで、満遍なく聴いてきているクリス・フォロワーの一人です。
そして、僕のクリス・コーネルは、本作「Badmotorfinger」からスタートしており、最初に聴いた時の印象は兎角強烈で、アルバム全体に滞りなく流れる暴力的な、或いは暗澹たるヘヴィネスに心臓を鷲掴みにされたのです。
音の壁
まず聞こえてくるのはBlack Sabbathに端を発する黒いヘヴィネスの波でした。本作はSoundgardenの四作目としてリリースされていますが、60年代末のクラウトロックによるサイケデリアの影響を飛び越えて、グランジならずとも、明らかなHR/HMサウンドが鳴らされていました。故に、本作はサイケデリアをあまり感じさせることなく、よりストレートなハードロック然とした佇まいがあります。
M3「Slaves & Buldozers」におけるクリスの歌唱は、まさに鬼気迫るものがあり、その刹那だけは、パンクやメタルなどのジャンルの波を飛び越えて、クリス・コーネルが稀代なるヴォーカリストとして君臨した瞬間でした。個人的には本作がクリスが最も70年代HR然とした声を聴かせていた作品だと思います。耳をつんざくフィードバックノイズから幕を開ける、本作の核ともなりうるM4「Jesus Christ Pose」。Aerosmithが76年にリリースした「Rocks」にも勝るとも劣らない緊張感が漂い、狂気的なリズムセクションがグルーヴしています。Soundgardenの代表的ナンバーである「Black Hole Sun」(4th : Superunknown)よりも個人的には好きです。一方でキム・セイルが金属的なGのサウンドを轟かせながら、リズム隊と一体となっていく隠れた本作のハイライトM7「Searching with~」。80年代のGUN’S以降の煌びやかな側面を魅せるM10「Drawing Files」では、グランジとは思えぬホーンセクションのフックを利用してブルージーなサウンドを奏でます。どこを切り取っても本当に素晴らしく、重心の低いサウンドが心臓を打ち抜きます。
そして、クリスの声には名前が付いていると確信する、本作のラスト・ナンバーM12「New Damage」で大団円を描きます。Soundgardenが商業的に成功したのは、やはり次作の「Superunknown」からですが、90年代ロックを語る上では絶対に欠かしてはならないアルバムが本作であり、Soundgardenという存在そのものなのです。是非音量をあげて。
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