Rock

レッチリのグルーヴに痺れた夜【Summer Sonic ’19】

 

 

レッチリの是非


2019年1月16日、Red Hot Chili Peppers(以下RHCP)が一組目のヘッドライナーであることがSummer Sonic(以下サマソニ)からアナウンスされた。

この時点において、サマーソニックが開催される真裏では、世界最大級のロック・フェスティバル、ウッドストックが開催される報道がなされており、レッチリ側がサマーソニックを選択してくれたことに感謝しつつも、US、UKにおけるロックの本流がもはや彼らにないことを証明させたのも事実だろう。

彼らの最新作「The Getaway」でもその評価は極端に二分され、ネガティブなものとしては「レッチリは今じゃない」「レッチリは古いバンドだ」という意見も散見された。

(引用:https://redhotchilipeppers.com/より)

 

確かにレッチリが世界的ヒット曲を生み出していたのは00年代であり、ジョン・フルシアンテが脱退した後のアルバム「I’m with you」でも軒並み評価はそんなに高くなかった。

その前提のもとに、今回ヘッドライナーに起用された彼らを、どんな眼差しで見ればいいのか────。

という考えを吹っ飛ばすステージだった。

ロックバンドの新世代登用が叫ばれる昨今において、私が彼らのステージングを見て感じたのは、「まだロックは消えていない」ということだった。やっぱりレッチリ、めちゃくちゃかっこいいじゃん、という想いがその冒頭から浮かび、周囲のオーディエンスもおそらく10年前と変わらずにその拳を振り上げ熱狂していたように思う。

 

 

レッチリのグルーヴに痺れた夜


彼らのステージはフリー、ジョシュ、チャドによるジャムから幕を開けた。上半身裸となったフリーのベースに重なるようにし、ランシドのTシャツを着たジョシュのギターが入り、チャドの重たいドラムが彼らの「音」を決定づける。もはやこの時点で、「ミュージシャンは『音』によって、何かを伝えようとする人だ」と思わされた。

ジャムでロックの礎を築いてきたのはレッド・ツェッペリンであるが、彼らのジャムもその方向性は違うにせよ、終わりに近づくにつれて強靭なグルーヴを生んでいく。

ヴォーカルのアンソニーが登場すると、オーディエンスは超熱狂の渦に飲み込まれ、相変わらず色違いの靴下を履く彼に安心した。

ライブは【Can’t Stop】からスタート。装飾過剰ではない、比較的シンプルなステージにヴォーカル、ギタリスト、ドラムス、ベーシストがいるという事実に心震えた。チャドの寸分たがわぬドラムスにカッティングが重ねられ、アンソニーの独特な声がのせられていく。続く【Scar Tissue】では、彼らの持っている哀愁的な何かを見せつけ、スタジアムに流れる感覚や空気を誰もが感じ取っていた。

そして最新作「The Getaway」からプレイされたのは【Dark Necessities】。言葉でうまく表現できないのだが、フリーとジョシュの、その心の方向性が一致していることを知った。10年前の演奏も当然素晴らしいものだったが、レッチリが「The Getaway」で魅せたその方向性に、立体感や深みが加わり、平坦ではない音像がピックアップされていた。

(引用:https://www.instagram.com/chilipeppers/より)

 

続く【Otherside】、【Hey】ではオーディエンスもシンガロングの波に参加し、【Dani California】においてはレッチリが長年積み重ねてきたファンキーかつポップなグルーヴを感じ、もはや彼らの代表曲となったこの曲の演奏に痺れた。

フリーが単ベースで弾き語りをした【The Needle and the Damage Done】はニール・ヤングからの拝借。マキシマム ザ ホルモンの上ちゃんやその他世界のベースプレイヤーに影響を与えたフリーのプレイは、当たり前に巧く、それ以上に彼のキャラクターの可愛さを感じた。

【I Like Dirt】、【Go Robot】では強烈なファンクを表現し、続く【Californication】ではスタジアムまるごと大合唱が起きた。ロックバンドとしての魅せ方の裏に、それぞれの技術力の高さと、それを伝えるだけの熱量とグルーヴを持っているバンドであることを痛感した。

【Around The World】から【Under The Bridge】の流れでは、「レッチリが偉大なるライブバンド」であることを証明し、強烈かつ彼らにしかできないであろうファンクをこれでもかというほどぶつけられた。

【By The Way】ではこの曲が17年前の曲であるということを忘れ、「Rock’n Roll」のまさに「Roll」の部分をイメージさせられた。ジョン・フルシアンテからジョシュ・クリングホッファーに変わったそのギターのトーンとコーラスも「今」のレッチリを体現するそのツールであった。

【Dreams of a Samurai】ではレッチリ流様式美を感じ、日本という国、日本にいる彼らのファンのことを考えてくれて歌ってくれたと思うと嬉しくてたまらなかった。日本人である私が、あの場でこの曲を聴けたという事実が何よりも嬉しかった。

【Give It Away】でジャンプを続けるチャド以外のメンバーとオーディエンス。よく使われる表現に「一体感のある~」というものがあるが、これこそがその言葉の本当の意味なのだと知った。「We love you」と何度も繰り返すフリー。オーディエンスの多くも「We love you」或いは「We love you forever」と思った人が多かったはずだ。

 

誤解を恐れずに言うと、ヴォーカルのアンソニー・キーディスは決して「歌がうまい」わけではない。しかしRHCPのヴォーカルとして、フリー、チャド、ジョシュとの演奏を重ねた場合、彼の声はスタジアムを掌握するに至るものへと変化する。つまりこの奇妙な変化は、彼らレッドホットチリペッパーズがアメリカ最大のロックバンドであり、スタジアムバンドであり、「グルーヴ」を持っていることを証明するものだ。

そういう意味において、私は「レッチリのグルーヴに痺れた」のである。私はきっと来年も再来年も、十年後も「レッチリ」を好きなままなのだと思う。

 

 

Set Lists ARE

01 Can’t Stop
02 Scar Tissue
03 Dark Necessities
04 Otherside
05 Hey
06 Dani California
07 I Like Dirt
08 Go Robot
09 Californication
10 Around The World
11 Under The Bridge
12 By The Way
13 Dreams of a Samurai
14 Give It Away

 


この度はコンテンツをご覧いただきありがとうございます。
次回もよろしくお願いいたします。

ワダアサト
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2 Comments

  1. B’zに比べると少しテンション低めの記事ですね。
    三日間とも観ましたが、ヘッドライナーは圧倒的にB’zが出音含め良かったです。時点でチェンスモ。レッチリは確かに良かったですが、なんだかパワーが失われた感じがしてしまい、私には響きませんでした。

    1. rhcp… 様
      コメントありがとうございます。確かに出音を考えた場合はB’zが圧倒的な良さを誇っていました。TOKYO三日目は行っていないので分かりかねますが、rhcp…様の仰ることも理解できます。以前の爆発のような若々しさは消えました。しかし私は「The Getaway」以降の「落ち着いた大人のロック」感が好きです。

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