Rock

オジー・オズボーン、10年ぶりの新作「Ordinary Man」について

 

 

①「メタルの帝王」半生

②”オジー・オズボーン”というキャラクター

③10年ぶり新作「Ordinary Man」が凄すぎる

 

 

①「メタルの帝王」半生


「メタルの帝王」と称されるオジー・オズボーンがヘヴィメタルというカテゴリの確立に欠かすことのできないバンド、ブラック・サバスを結成し、BLACK SABBATH(邦題:黒い安息日)をリリースしたのが、1970年2月13日(金曜日)のことだった。

Black Sabbath / Black Sabbath

サバスにはご存知トニー・アイオミが所属し、レインボーからロニー・ジェイムス・ディオ、ディープ・パープルからイアン・ギランなどが参加した。つまるところ、このブラック・サバスというバンドを抜きにして、この後のメタルやハードロックを語ることはできないと言ってもいい。

このオジー及びブラック・サバスは直系のHR/HMバンドのみならず、ハードコア・パンクやグランジ勢などにも影響を与え、メタルの源流とされている。ツェッペリンと並び、「偉大」などという言葉では言い尽くせないロック最大の、まさに「帝王」のように思える。

 

一方、79年にオジーがソロ名義での活動をスタートさせると、そこには今も愛されるランディ・ローズがいた。ランディ・ローズのヘヴィなリフと、実はメロディアスタイプのオジーは、ソロ名義でも成功を収めてしまう。アルバム「Blizzard of Ozz」(邦題:ブリザード・オブ・オズ~血塗られた英雄伝説)では、ヴァン・ヘイレンのファースト「Van Halen」と並び、’80のメタル・ギターの基本を形作っていった。

Blizzard of Ozz / Ozzy Osbourne

Van Halen / Van Halen

 

 

②”オジー・オズボーン”というキャラクター


Ozzy Osbourne(引用:https://www.biography.com/より)

そして、このオジー・オズボーンという人物は、まさにロックやメタルを体現するキャラクターであろうとしているように思える。徹頭徹尾、話題に事欠かない人でもあった。

生きた鳩を食べ、コウモリを生で食し、ステージにヤギを放たれたこのオジー・オズボーンという男。徹底的に「悪魔的」イメージを保持しつつ、常に我々リスナーを楽しませてくれる、超一流のエンターテイメント職人だったように思える。主張や行動が常に問題になるあのマリリン・マンソンですら「彼だけには敵わない」という人物がオジーその人だ。

 

 

 

③10年ぶりの新作「Ordinary Man」が凄すぎる


①で先述したように、ブラック・サバスがファーストをリリースしたのが、70年のことだ。そしてそれから50年、つまりは半世紀経てこの度の新作「Ordinary Man」がリリースされること自体が、そもそも素晴らしいことなのだが、この「Ordinary Man」はその音楽的内容を含め、本当に素晴らしいものだった。

ミュージシャン、特にヴォーカリストは楽器のように「声」を取り換えることができない。ギターの弦を張り替える如く、取り換えがきかない。だからこそ、いわゆる”歌えない”HR/HM系ヴォーカリストが生まれてきてしまう。ヴォーカリストだって人間だから、「老い」にはどうしても敵わない。

しかしこの「Ordinary Man」はパーキンソン病に罹患した、御年71歳の新作だとは到底思えなかった。

Ordinary Man / Ozzy Osbourne

楽曲の傾向は、今までオジーが重ねてきたグルーヴとは差異がある。しかしオジーの声が音に乗った途端に、これはかくも間違いなく「オジーの曲だ」と認識させる。ザック・ワイルドの不在を補うかのように、豪華なゲストが参加していて、ダフ・マッケイガンとチャド・スミスが良い仕事をしてくれている。

ここ数日はいわゆるHR/HMから距離を置いて、UKポスト・パンク以降のロックやアンビエント~エレクトロニカを聴いていたせいもあり、歪むハードでヘヴィなグルーヴに心奪われてしまう。

「オジー・オズボーン的様式美」が滞ることなく全体に流れており、爆発的、衝動的な感触も感じさせる。しかし一方で、年を重ねたオジーなりのロック・バラードも印象的で、なんだか一抹の寂しさを覚えるのも確かだ。

ただ、ギターはザックがいないことによって、うまく調和しすぎている感じがして、スラッシュが全編に渡り弾いても良かったのかな、と思わせる部分もある。

そして特筆すべきは、ポスト・マローンとのコラボレーションだ。ガンズのスラッシュやダフ・ダフ・マッケイガン、チャドといったハードロック畑の人は想像に難くないが、音楽タイプの異なるマローンとのコラボは、間違いなく新風を吹かせてくれると信じている。オジーに追従するリスナー、マローンに追従するリスナー、異なるセグメントの人々が異なる音楽を聴くことは、業界そのものの盛り上がりに通ずる。

この「Ordinary Man」は本当に素晴らしいアルバム。これまでメタルに興味のない人、興味のあった人、そのどちらの範囲も打ち落とせる快作だ。是非、一聴してみてほしい。

 


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ワダアサト
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