お盆を前後にして、山梨県のとある山系で蓮華升麻(レンゲショウマ)が咲きます。今回はこのレンゲショウマを目当てに、軽い登山をしてきました。
まず山頂直下にお目見えしたのはシュロソウです。
棕櫚草(シュロソウ)
Veratrum maackii var. japonicum
学名japonicumの通り、日本固有のユリ科シュロソウ属の多年草で、山梨県での個体数は比較的多いです。しかしながら、この花もまた鹿に食べられてしまう花であり、鹿柵の外は壊滅状態にあり、今後の生育が懸念されます。山梨県ではRDBに掲載されていないものの、今後鹿の個体数が変化しない限り、徐々に見られなくなっていく山野草であると推察されます。
そして山頂をやや過ぎ、下道へ入ると柵の中でレンゲショウマが咲いていました。
蓮華升麻(レンゲショウマ)
Anemonopsis macrophylla
こちらもシュロソウと同じく日本固有種のキンポウゲ科の多年草ではありますが、盗掘と鹿害により、個体数が激減した花の一つです。山梨県では今のところRDBに掲載されていないため、工事の際に刈り取られてしまうなどして、生育地そのものが消滅してしまった箇所もあるとのことです。
加えて、私が仕事で仕入れに行った長野県のとある山野草店では、この花がこれでかというほど売られており、「種子から育てたものではない」と聞いたので、恐らくは山から採ってきたものであろうと思います(この花の挿し木は不可)。こういった業者が蔓延ることによって、日本の希少植物が絶滅の危機に晒されているのは由々しき事態です。
また、この山域にはカイフウロと呼ばれる伊予フウロの変種が咲き、その独特な花姿が極めて印象に残りました。
甲斐風露(カイフウロ)
Geranium shikokianum var. kai-montanum.
環境省RDB:絶滅危惧Ⅱ類
山梨県RDB:準絶滅危惧種
いずれにしても、この山域は鹿の絶対数が多すぎて「鹿さん」などと悠長なことを言っていられない惨状となっています。
元はと言えば人間の業で増やしてしまった鹿ではあるから、彼らに罪はないものの、もう少し何とかならないものだろうかと思う次第です。