MUSIC

THE 1975、新しいロックの在り方をみた【Summer Sonic 19’】

 

 

THE 1975の新しさ


今、最も勢いのあるポップアーティストは、ビリーアイリッシュである。昨年のSummer Sonicにも出演を果たしたビリーアイリッシュは、もはや若い人々のスターになり得た。

では、最も勢いのあるロックバンドは?と聞かれたら、私はTHE 1975と答える。

「今」、HRやHMは下火となり、世界の音楽シーンを見渡せば決して「ロックンロール」がその産業の中核を担っているとは言えない。エレクトロニカに傾倒していくバンド、Summer SonicのTOKYO day3に象徴されるように、ロックというものは世界中の人々が熱狂するツールではなくなった。

しかしTHE 1975のステージを観た誰もが「今のバンドだ」と思ったことだろうし、この2019年という時代を体現するバンドスタイルというものを考えたのではないだろうか。

ロックというものの概念を考えた時、少々古いイメージではあるが、タバコと酒が浮かぶ。ロックにはタバコと酒が良く似合う。そしてTHE 1975のステージにもその言葉はぴったりマッチした。

しかしそのイメージは旧態依然とした、パンキッシュな「タバコと酒と女」といった類のものではなく、完全に新しいタイプのものだった。大吟醸とポカリスエットのペアリングをしつつ、ステージ上でタバコを吸うvo.マシューヒーリーは、とてつもないほどにエモーショナルで直情的で、オーディエンスの心を鷲掴みにした。

ロックバンドにとって「新しさ」を観る者・聴く者に与えることは、非常に難易度の高い技である。多くのバンドはその音楽性のバックグラウンドに、ルーツとなるバンドを抱えているが、THE 1975にはそういったものを感じ取れないほどに「新鮮さ」にフォーカスが当たっていた。

 

 

魅せ方の妙


先のSummer Sonicを思い出した時、マリンステージ上で繰り広げられたTHE 1975のアクトは、絶妙のタイミングであった。空が夕焼けに染まり、台風の空模様が明けていく中、【Give Yourself a Try】で幕を開けたTHE 1975。まず直感的に感じ取ったのは「魅せ方の妙」つまり、魅せ方が究極的に巧いバンドであるということだ。そしてこの「究極的に」というのは、世界中どこを探しても存在しないという意味の言葉となる。

ステージの中央に配された長方形のLEDを散らしたモニュメントを筆頭に、大画面に映し出される映像美、それらが放つ眩いライトと色彩、マシューの衣装、それら全てが緻密に計算され尽くされた「完璧」なショーだった。魅せ方は完璧でありながら、マシューの放つ半ば怠惰的で、”今”のヴォーカリスト感。”今”のロックバンドの最高峰だと思わざるを得ないショーだった。

そしてこれほどまでに、”生”で聴きたいバンドはそうそういない。その根拠は彼らの演奏力の高さや緻密に計算されたステージングではなく、彼らが発するまるで霞のような雰囲気にある。俗的な表現にはなるが、マシューの声は甘く、とろけそうな弱々しさを発しながらも、ロックバンド特有のその場を掌握してしまう強さと弱さの同居を感じられた。

 

【TOOTIMETOOTIMETOOTIME】では、ダンサーとユニゾンで踊り、「Thank you」と繰り返すマシュー。【She’s American】では彼らをポップアイコンとみなしていた聴衆迄もを虜にしてしまい、【Sincerely Is Scary】では満杯になった会場の全てのオーディエンスとシンガロング。遠く離れたイギリスのバンドを、日本のオーディエンスが迎え、そして彼らの音が優しく包んでくれることに対しての幸せを感じ取らずにはいられなかった。

【I Like America & America Likes Me】から【Love It If We Made It】までの流れでは、今の時代ならではのロック感を魅せ、彼らの代名詞的な【Chocolate】ではまさに一体化したオーディエンスとTHE 1975。続く【Sex】ではマシューのポジティブな側面と、いわゆる既存のロックンロール感を感じ、彼らの音に裏打ちされた音楽的な技術の高さをも感じることが出来た。

そして最後となった【The Sound】ではあの場にいた全ての人が待ち望んでいたファッキンジャンプをオーディエンスにぶつけ、オーディエンスも自身の心の中にあるなにかネガティブなものを吐き出していたように思えた。

彼らがプレイしていたおよそ一時間は、刹那的で、このライブを観た者たちは、今後の自身の生活の中でふとした時に思い出すだろう。そしてその瞬間のことを胸に抱いて、ネガティブなものを吹き飛ばしていくはずだ。それほどまでにTHE 1975のライブは、観た人の心の中に半永久的に留まり続けるものだった。

そして彼らを招聘してくれて、今という時代に彼らの音を聴かせてくれたSummer Sonicには感謝しかない。ロックが好きで、音楽が好きで、まだ彼らを観ていない人は、ただちに何らかの手段を講じて”生”で観てほしい。それは「いつか観れたらいいな」ではなく「right now」=「今すぐ」である。

 

Set Lists ARE

01 Give Yourself a Try
02 TOOTIMETOOTIMETOOTIME
03 She’s American
04 Sincerity Is Scary
05 It’s Not Living(If It’s Not With You)
06 Love Me
07 Robbers
08 I Like America & America Likes Me
09 Somebody Else
10 I Always Wanna Die(Sometimes)
11 Love It If We Made It
12 Chocolate
13 Sex
14 The Sound

 


この度はコンテンツをご覧いただきありがとうございます。
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4 Comments

  1. ぜーんぜん分かりませんでした。1975の良さ。私が古いのかなあ?

    1. 1975の不思議体験でした 様
      コメントありがとうございます。実際にしっかりと見聞きし、それでも「合わなかった」ということもあるかと思います。そういった意見があって当然です。

  2. 粉川しのさんという方をご存知ですか?ロキノンの記事を書いておられる方です。その方の記事と、この記事の決定的な違いは「先入観の有無」なのだと思います。粉川さんはバリバリのキャリアでいい意味でも悪い意味でも先入観のある記事を書いていました。でもこの記事においては、そういった先入観みたいなものがなくて、スッと落ちる感覚になりました。

    1. ししど 様
      コメントありがとうございます。粉川しのさん、もちろん存じあげています。お褒めの言葉をいただきましてありがとうございます。

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