「OMOTE TO URAが選ぶ名盤」シリーズの第五篇はコールドプレイの「Viva La Vida or Death and All His Friends」。
第一篇「ROCKS / Aerosmith」
第二篇「マグマ / 稲葉浩志」
第三篇「Physical Graffiti / Led Zeppelin」
第四篇「朝顔 / レミオロメン」
①「Viva La Vida~」とは
②まさに「美しき生命」
③生と死
①「Viva La Vida~」とは
Viva La Vida or Death and All His FriendsはイギリスのロックバンドColdplayによる通算4枚目のオリジナルアルバム。2008年にリリースされ、「邦題:美しき生命」の名で知られる。
ジャケットには、19世紀のロマン主義を代表する画家のドラクロワの「La Liberté guidant le people(民衆を導く自由の女神)」が描かれ、商業的にはアメリカ、オーストラリア、ドイツ、フランスなどにおいて1位を獲得、日本では3位を獲得した。言ってしまえば「売れた」アルバムでもある。
その売上は彼らの代表作となったファーストアルバム「Parachutes」を超え、全世界で1000万枚超のセールスを誇っている。
そして本作「Viva La Vida」の特徴は、究極的にまで美しいメロディと、それをプロデュースするブライアン・イーノの存在だろう。コールドプレイにおけるファーストからの三部作は、いずれもサウンドはロックンロールの軌道を描いてきたし、ギターリフの過剰さが重要なポイントの一つでもあった。しかし、今作ではブライアンによる半ばシューゲイザー的アプローチがあったことは確かだと言える。
加えてタイトルトラックの「Viva La Vida」は何度も街で流れ、言わば商業的な「擦り」を受けている。それほどポピュラリティの高いサウンドではあるが、本作の目玉は突出した単曲のみで語られるべきことではない。
②まさに「美しき生命」
このアルバムにおいて重要なのは、タイトルトラックのメジャーさや、商業的成功でもない。ある人は本作を「メジャーに寄りすぎだ」あるいは「商業化されすぎだ」と言うかもしれない。
しかしそれ以上にこのアルバムが秀逸なのは
⑴アルバム全体のコンセプチュアルな流れ
⑵そしてその流れの中で、誰もが経験せざるをえない「死」という現象と、その対比の「生」。それらを一枚のアルバムにぎゅっとパッケージングするという行為そのもの
だと考えている。
ここで言う「コンセプチュアル」とは、大まかに意味を捉えた場合の───というのは日本的な解釈における「難解で分かりにくいもの」という印象ではなく、まさに一つのコンセプトに則って製作された、という意味を指す。
これまでのコールドプレイのサウンドとは大きく異なり、所謂クラシカルなロックンロールの出音ではないことは確かだ。そのことにおける賛否両論が渦巻くことも理解可能だし、過去のバンドを見ていてもそういった現象は必ず起きる。
だが、これほどまでに美しくも儚く、そしてなおそのサウンドの中に完全にトリップできるアルバムというのはそう多くない。一方では「散漫である」という声もあったと記憶しているが、それはあくまでも人の「生」と語ろうとする時の、言わば副作用みたいなもので、誰もが夢見る美しくも完璧な「生」というのはほとんど存在しないことと同義だと考えている。
③生と死
そして多彩で装飾的なサウンドを通し、リスナーが認識するのは「生」の煌びやかかつみずみずしい情緒だろう。しかしそれだけを表現したいのならば、巷に溢れてすぐに枯れてしまいそうなポップソングを作ればいい。だがこのバンドは決してそういう持って行き方をしなかった。
とどのつまりそれは「死」の存在である。M1:Life In Technicolorからラスト:Death and All His Friendsへの重複的展開は、ありがちな考えではあるが、それを実行に移したバンドはそう多くない。しかし、その全体と呼応する流れの中に、少なくとも「死」の存在を意識することは必然であるし、そこがまたこのバンドの持ちえた一つの哲学であるようにも思われる。
多くのクリエイティブなものは「生」を語ろうとする時、その「生」にしか目を向けない。それはそれで、また違った魅力があることも確かだろう。しかし私はそのことに対する「不自然さ」を覚える。「死」はあくまでも「生」の延長線上に存在し、普遍的な価値=「生」を意味のあるものとして提供してくれる。
そしてそのことを、私はこのアルバムで強く実感する。と同時に、自分の人生や他人の人生がみずみずしく、美しさや希望に満ち溢れているという当たり前の事実に気づかされる。
だからこそViva La Vida or Death and All His Friendsは私にとって「名盤」なのだろう。
聴いたことがある方は、もう一度。聴いたことのない方は、出来うる限りのヴォリュームで聴いてみてほしい。
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