Stevie Salas
Colorcode
1990
ファンク × ブルーズロックの融合
ミック・ジャガー、ロッド・スチュワート、そしてParliamentを率いるジョージ・クリントン等、錚々たる顔ぶれと共にワークを行い、セッション・ギタリストとして名を馳せたステーヴィー・サラス。近年ではB’zの稲葉浩志との共同プロジェクトINABA / SALASでの活動も記憶に新しいです。
そんなサラスが自身のソロプロジェクトとして活動をスタートさせたのが90年(88年)、Stevie Salas名義として初めてとなる本作をリリースしたのもこの年でした。
60年代にJimi Hendrixがサイケデリックなブルーズロックを奏で、80年代にその鉱脈を継承・発展させたStevie Ray Vaughan、それらの後継として存在したのがStevie Salasであり、サラスは彼らと比して、よりブラック・ミュージックに忠実なファンキーなサウンドを鳴らしていました。本作が描くのは、一連の90年代オルタナティヴ、ミクスチャーとは視線を変えたカルチャー・ミックスであり、強烈なグルーヴを特徴としていました。
その背景にはParliamentやFunkadelicなどのPファンク勢の存在があり、ジミヘンやレイ・ヴォーンがそうであったように、彼もまた独自の「リズム」をPファンクから吸収し、HRとして放出していました。分かりやすく言えば、黒いファンク・ミュージックをHRに捻じ込んだような音で、リズム重視のサウンド・クリエーションがなされていたということです。
フィジカルに効くファンクのリズム
バッキングの裏で細かく鳴るカッティングのリズムが特徴的なM1「Stand Up」から本作は幕を開けます。ヘヴィでありながら、ブラック・ミュージック由来のタイトさをも持ち併せていることが恐ろしいです。続くM2「Blind」ではシャープなカッティングを聴かせ、言葉の意味が理解できずとも、その強烈なリズムでリスナーの身体を揺らします。
日本人の耳にはメロディがやや弱いように聞こえますが、それでも強烈なリズムの存在によって覆われたサウンドは、フィジカルに強く効いてきます。そして本作を代表するナンバーM6「The Harder They Come」では猥雑なアメリカン・ハードロックにファンクのリズムを融合させています。強めのディストーションを効かせたギターの音色とフレーズは、明確にSalasであることの強烈な裏打ちとなり、ハネる黒いビートを泳ぐソロも突き抜けています。ややDavid Bowie「Moonage~」を感じさせるM7「Over and Over Again」を経て、スタンダードなブラック・ミュージックを聴かせるM8「Indian Chief」、そしてラストナンバー「Cover Me」でアルバムは終わります。重心の低いリフを中心に、Salasの細かいフックが有効に鳴らされています。
サラスは世界中の錚々たるヴォーカリストと仕事を共にしてきていますから、言及される機会がありませんが、本作で聴かせる彼のヴォーカリゼーションも普通に素晴らしいです。このことによってファンクそのものではなく、ロックの一角であるという及第点を保っているように思えます。
是非とも、自由に身体を揺らしながら聴いていただきたいアルバムの一つです。
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