1950年代に様々なミュージシャン達によって、そして様々な音楽の影響を受け誕生したロックンロール。ロックンロールはやがて「ロック」と呼称を変え、2020年の今に至るまで変遷・細分化されている。
そんな「ロック」だが、実際のところ、そのジャンルはかなり幅広いもので、一体自分はどんな音楽が好きなのか?一体ニューウェイヴって?などという疑問が音楽を聴き始めると浮かんでくる。
今日はそんなロックのジャンルについて、とにかく広く浅く書いていきたい。これをきっかけにロックを知り、自分を知っていただけたら幸いです。(とても長い記事です)
本記事は70年代~80年代についてです。
50年代~60年代はこちら。
プログレッシブロック(Progressive Rock)は1960年代後半のイギリスで発展したロックのジャンル。70年代にかけて流行。Progressive(=進歩的、革新的)。日本ではこのジャンルを「プログレ」と呼ぶ。
プログレはこれまでのシングル中心のロックからアルバム志向のロックへとシフトしていき、アルバム全体を包括するコンセプトなどが設けられることもあった。(俗にコンセプト・アルバム)
ロックンロールの要素にクラシックやジャズなどを融合し、アートロックなどとも呼ばれた。ヴォーカルを中心としたキャッチーで歌いやすい曲というより、演奏中心のジャンルでインストゥルメンタル作品も多く、長尺主義傾向にある。
中でもキング・クリムゾン、ピンク・フロイド、ジェネシス、イエス、エマーソン・レイク&パーマーはプログレを代表するバンド。
The Court Of The Crimson King / King Crimson
グラムロック(Glam Rock)は1970年代に流行したロックのジャンルで、様々なロックジャンルの中でもそのサウンドによる区別が優先されない。煌びやかでけばけばしいロック全般を指し、同時にファッションシーンへ与えた影響も計り知れない。中性的な振る舞いで、メロディアスでキャッチーなサウンドが特徴の一つ。
このジャンルの勃興の時代背景としては、サイケデリックロックに端を発する60年代のヒッピー文化などの自然回帰志向への反動という説もある。特にデヴィッド・ボウイとT.REXはこのジャンルを語るうえで欠かせない。
日本では70年代以降の沢田研二、忌野清志郎、玉置浩二率いる安全地帯などにも影響を与え、初期X JAPANなどのいわゆる「ヴィジュアル系」の確立に一役買った。
David Bowie
ハードロック(Hard Rock)は、既存のロックと比較すると、ラウドなサウンドが特徴の一つとなるロックジャンル。ブルースロックやサイケデリックロックを直接的なルーツとし、ディストーションなどによって歪ませたギター、長めのソロ、ギタリスト(及びヴォーカル)が主役となるロックで、幾つかの定義は存在するが必ずしもその限りではない。
ヤードバーズを脱退したエリック・クラプトンが結成したクリームをはじめとして、ジミ・ヘンドリックス、ザ・フー、ビートルズなどがその起源となったとされる。特にジミヘンは大音量のディストーションサウンドの先駆けとなった。
1968年になると、ヤードバーズのクラプトン以外のギタリストがそれぞれのグループを結成。ジェフ・ベックはジェフ・ベック・グループを、ジミー・ペイジはレッド・ツェッペリンを結成した。特にツェッペリンはハードロックの礎を築く最重要バンドとなった。そしてそのツェッペリンと並び、ハードロックの基礎を築き、なお商業的にもヒットを重ねたバンドがリッチー・ブラックモア率いるディープ・パープルだった。
そして70年にはメタルへ繋がりをもつオジー・オズボーン率いるブラック・サバスがデビューした。
70年後半になると、イギリスからクイーン、アメリカからエアロスミス、キッスの三組が大きな人気を博すようになる。オーストラリアからはAC/DCが単直なハードロックサウンドで同じように人気を博した。
1980年代にはボン・ジョヴィが商業的にヒットを重ね、アメリカン・ハードロックが確立された。その流れの中でヴァン・ヘイレンやラット、モトリー・クルー、ドッケンなどが活躍。米・ロサンゼルス出身のグラムロックに影響を受けたハードロックバンドが次々デビューし、それらもヒットを重ね、これらはLAメタルと呼ばれるようになった。
更にハードロック(メタル)は70年から80年にかけて商業的にも大きな成功をあげ、これまでのロックにおけるムーヴメントを包括した巨大なジャンルになった。そのことによって、これらのジャンルはかなり幅広く派生していくことになる。下図はHR/HMの派生ジャンルの一部。(あくまで一例)
このジャンルは今に至るまで様々なオーディエンスに支持されているが、こと日本においてはほとんどHRバンドは存在しないものの、B’zを筆頭に活躍を続けているバンドもある。(グローバル的にもHRマーケットは縮小傾向)
ヘヴィメタル(Heavy Metal)はハードロック(以下HR)よりもリズムが速く、より重厚で攻撃的なサウンドが特徴のロック。一方でHRとの区別は曖昧で、全ての人が納得するような明確な定義は無い。
中でもブラック・サバスがヘヴィメタルに与えた影響は大きく、反キリストや悪魔崇拝などのブラックメタルに繋がる要素を確立したとされる。ハードロックとの親和性や関連性は最も高く、ガンズ・アンド・ローゼズなどはHR/HMと呼称されることが多い。
イギリスでは70年代にHRが大きく流行し、ロック本流の流れはHR一辺倒になった。しかしその反動として、英国内の悪化していく社会情勢の中、後述の「パンク」が勃興。既存のHR・プログレ勢はそれらの新しい潮流に押され、パンク / ニューウェイヴに対し「オールドウェイヴ」と呼ばれてしまう。
しかしメインカルチャーがパンクへ移行していく一方で、アンダーグラウンドシーンにおいて「NWOBHM」の流れ、トレンドが生まれる。
(画像:NW))
80年代になると、パンクは短期間のうちに収束し、その期間に息を潜めていたメタル勢アイアン・メイデン、デフ・レパードがデビューする。金属のように鋭くありながら、HRをよりハードにしたサウンドは「メタル」と呼ばれ、後にこのジャンルは独自に進化を遂げていく。このジャンルは「メタル」という大きな括りが完成して以降、かなり詳細にまで細分化されていく。
加えて80年代中頃の欧州では、イギリスの伝統的ハードロックやリッチー・ブラックモアの影響のもと、クラシック・ミュージックを取り入れたネオ・クラシカル・メタルがイングヴェイ・マルムスティーンなどによって確立。一方アメリカではNWOBHMが失速した後に、メタリカを中心としてリフとテンポの速さに重きを置いたスラッシュ・メタルが大きく流行した。メガデスやアンスラックス、スレイヤーを加え「四天王」などと呼ぶことがある。
④の括りに入れたLAメタルの存在や、HRからHMへと路線変更を行ったジューダス・プリースト、その他メタリカなどによってメタルシーンは多極化。メタルは現在に至るまで細分化・多極化の流れを辿っている。下図は主なメタルのサブジャンル。興味のある方は是非、拡大を。
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日本では、ラウドネスやアンセムなどがその代表となるバンドで、現在に至るまで息の長い活躍を続けている。
ガレージロック(Garage Rock)は1960年代中盤以降に台頭したロックのジャンル。そのガレージとは「車庫」のことを指し、そこで演奏するアマチュアバンドが多かったことに由来する。ストーンズやビートルズによるブリティッシュ・インヴェイジョンの強い影響を受け、初期ロックンロールへの回帰志向が強い一方で、サイケデリックロックからの影響も色濃い。
また70年代パンクの勃興へ与えた影響もかなり大きく、90年代のグランジ・ムーヴメントを発端とするオルタナティブ潮流へのサウンドにも大きな繋がりをみせた。
しかしこのガレージロックに至っては、第一次ガレージロックはそこまでのインパクトを放たず、その後の90s~00sオルタナ以降の世代へとガレージ・リバイバルとしてゆっくり浸透していく。
ニューヨーク・パンク
1970年代中盤に、ニューヨーク・ドールズやヴェルヴェット・アンダーグラウンド、イギー・ポップ率いるザ・ストゥージズなどがルーツとされるNY・パンクが勃興。スタジアム・ロック(ハードロックを中心とした商業主義的側面をもつロック)が全盛の際に、アマチュアバンドの多くが演奏する機会がなかったことなどから、それらバンドが新たな潮流として「NY・パンク」を興した。
70年代後半になると、アメリカではパティ・スミス、ラモーンズ、トーキング・ヘッズなどがカンサスなどを拠点に活動を開始した。
ロンドン・パンク
一方イギリス・ロンドンにはNYにわずかに遅れて「NY・パンク」が到着。NY・パンクと比較すると、当時の英国内の社会情勢と相まって、より左翼志向が強く、政治的反抗心がそのサウンドには込められていたとされる。初期ロックンロールから商業的になっていったハードロックなどに対抗し、攻撃性と反社会性を持っていた。
セックス・ピストルズやクラッシュ、ダムドがその代表的バンドで、失業者の増加という社会問題に怒りの声をあげる若者たちの声を掬いあげながら、パンク・ムーヴメントは巨大化していった。ファッションや芸術へも大きな影響を与えたが、ピストルズが解散して以降、「パンク」はポスト・パンクやニューウェイヴへと移行する。結果としてパンクは短期のうちに収束した。
ポストパンク(Post Punk)はパンクが登場~発展~収束後にその流れを受け継ぐようにして表面化してきたロックを指す。ポストパンクには純粋な意味でのパンクロック以外にも、実験音楽やファンク、スカなどが集約・内包され、パンクが意味するところの貪欲さなどをそのまま持ち込んだ。
同時期に発展したニューウェーヴと並列で語られることの多いジャンルではあるが、ポストパンクは比較的シンセサイザー色が弱く、ガレージロックに似た枯れた音像とされることが多い。またジョイ・ディヴィジョンなどのバンドが代表するように、内省的なイメージを含む。
一方ニューウェーヴはアメリカ進出に成功し、パンクロックのメンタリティをそのままにして、グランジへと移行していく。
フュージョン(Jazz Fusion、Fusion)は1970年代半ばに発生した、ジャズから発展したジャズ派生ジャンルの一つ。1960年代には、ジャズはロックンロールの影響により下火になった。その影響下にあったマイルス・デイヴィスなどが電子楽器をジャズに導入していく。当初はジャズロックなどと呼ばれ、ジャズロックはいちジャンルとして確立した。
一方でそれらにブルースやサイケデリック、ハードロックの要素を内包していったのがフュージョンで、ジェフ・ベックやラリー・カールトンがギターを中心にしたジャズ・ロック=ジャズ・フュージョンを演奏しはじめる。
またジャズ方面ではフュージョンはスムースジャズへと移行していくが、その呼称はコンテンポラリー・ジャズに分類される場合もある。
AOR
AORとはAlbum-Oriented Rockの略語であり、ロックにおけるジャンルの一つを指す。上記フュージョンは当初クロスオーヴァ―などと呼称されていたこともあり、それらから派生した。しかし日本においてはAORの「A」が「Album」ではなく「Adult-Oriented Rock」となる場合が多い。
元来はアルバム全体の完成度を重視する、いわばピンク・フロイドの「The Dark Side Of The Moon」やザ・フーの「Tommy」などを指したが、後者の場合、「大人向けのロック」と解釈されることが多い。中でもボビー・コールドウェルとボズ・スキャッグス、スティーリー・ダンなどがその代表的存在で、現在ではシティポップに繋がりをもつ音楽ジャンルと言える。
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