Rock

Red Hot Chili Peppers「Blood Sugar Sex Magik」

 

Red Hot Chili Peppers
Blood Sugar Sex Magik
1991

 

強烈なファンクネスが裏打ちする”プリミティヴ”

1989年にRHCPはGにジョン・フルシアンテ、Drにチャド・スミスという現在のメンバーを迎え、4作目「Mother’s Milk:母乳」をリリースしています。そして、90年代に差し掛かり、彼らにとっても、そして世界にとっても、90年代における最も重要な作品のうちの一枚、本作「Blood Sugar Sex Magik」をリリースします。

86年、一時期勢いが失速していたAerosmithをRUN-D.M.C.と掛け合わせ、見事なまでにラップ×HRの融合を成功させた巨匠、リック・ルービンがはじめてプロデューサーを務めました。

本作は謂わば「ファンクを主軸としつつもパンク、メタル、ラップなど様々な音楽性をRHCP的オルタナティヴに落とし込んだ」といったところでしょうか。無論、強烈な下地になったのはアフリカの土臭いブラック・ミュージックとファンクの香りで、そのことからは極めて原始的なロックンロールのテンションを感じ取ることが出来ます。また、そういった背景の中でも、バンド・アンサンブルは前作に比して緩急の妙を得て、RHCPとしては完全に一つの形になったと思われます。

 

US・MIXTUREの記念碑へ

そしてやはり特筆すべきは、RHCPサウンドの主軸:フルシアンテのカッティングでしょう。艶やかでありながら切れ味抜群のGは、フリー、チャドのリズム隊と並んで、眩惑の最高峰へと着地します。また、サウンドは80年代のクリアな音を組み、そこで一つの楽曲を構成していくという過去的なものから脱却し、シンバルの濁りや生の揺れを排除せず、全体のグルーヴを強調する方向へ移行し、その意味でチャド・スミスのプレイは凄まじいものでした。

ギター一本で魅せる旧年代のHRの定石とは異なり、アンソニー・キーディスを含めたグルーヴまるごと”泣き”或いは”センチメンタル”の要素を完全に掴んだアルバムでもあります。

一方では70年代HRやプログレへの傾倒も顕著で、そのこともリスナーを激しく選ばない結果となったのではないかと思います。シングルカットされたのはM2「If You Have to Ask」、M3「Breaking the Girl」、M5「Suck My Kiss」、M9「Give It Away」、M11「Under the Bridge」ですが、あくまでもアルバムとして聴くべき一作です。

本作Blood Sugar Sex Magikは、明確に90年代アメリカのロックシーンを、ニューメタル×ブラック・ミュージックとしてクロスオーバーさせる起爆剤になりえ、当時”新しい”白人の若者たちが解釈・再構築していくプロセスを、完全にドキュメントした一作でもあります。故に本作は間違いなくUSミクスチャーの金字塔の一つであり、歴史的名盤の一作に数えられるのです。


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