先日「植物のクレイジーな生存戦略」というコンテンツを配信しました。その中では、植物たちの生きていくための戦略を簡単にご紹介しましたが、それらと同じように、ミニ盆栽やコーデックスに付く「病害虫」も信じがたい生存戦略を取り生きています。
これらの病害虫は、人間やミニ盆栽にとって無害なものもありますが、多くのものが「有害」で、症状が進行してしまうと樹木にとって致命的な一撃を与えることになります。気温も上がってきたことですし、今回はそんな病害虫の対策・防除について書いていきたいと思います。
※虫が出てきますので、苦手な方はご遠慮ください。
①吸汁性害虫
②恐怖!アブラムシ襲来!
③食害性害虫
④病害
①吸汁性害虫
まず、ミニ盆栽における病害虫を大きく分けますと、
・吸汁性害虫
・食害性害虫
・病害
となります。
【吸汁性害虫】においてはその名の通り、植物の内部組織を食管を通して吸ってしまう害虫を指し、代表的な害虫には「アブラムシ」「カイガラムシ」「ハダニ」などが挙げられます。
【食害性害虫】においてもその名の通り、葉や枝の組織そのものを食べてしまう害虫を指し、代表的な害虫には「ケムシ」「キクイムシ」「テッポウムシ」などが挙げられます。
【病害】においてはウイルス性、菌性共に挙げられ、「炭疽病」「斑点病」「褐斑病」などが存在します。
いずれにしても、これらの病害虫が進行してしまうと、せっかくの美しい植物が枯れてしまう危険性が高くなります。その為、適切な対処を行うことが求められます。
②恐怖!アブラムシ襲来!
少し長くなってしまいますが、まず圧倒的に注意しなければならないのが吸汁性害虫の代表「アブラムシ」です。
アブラムシ(引用:アース製薬)
このアブラムシは、どんなに気を付けていようと必ず春になると出現するヤツでして、植物の見た目も悪くなる他、時に植物そのものを枯死させてしまう厄介者です。では、なぜアブラムシに注意しなければならないのか、その生態を通して細かく見ていきます。
⑴恐るべき繁殖力
一匹のアブラムシが植物に付いたとします。その場合、一匹からどのくらいのアブラムシが増えるかご存知でしょうか?100匹?1000匹?
答えは…10000匹以上です。
そもそもアブラムシは、実にメスだけで子供を産むことができ(単為生殖)、産んだ子供が更に子供を生み、冬になるまでこの半永久的な繁殖を続けます。そして驚くべきことに、温かい季節は卵ではなく成体で子供を産み、生まれたその日から植物の汁を吸い始めます。
また、もっと恐ろしいのは、羽を持たないアブラムシが植物を覆いつくすほどになると、今度は羽を持った子供を産むようになり、範囲が広がっていきます。加えて、冬間近になりますと、今度はオスと交尾をし、来春に備えた「卵」を産むようになります。
⑵アリとの共犯関係
そして、これらアブラムシが吸汁をはじめると、ノンストップで肛門から「甘露」と呼ばれる透明な液を出し続けます。ご存知の通り、アリがこれらを好みますので、アリは積極的にアブラムシを保護するようになり、クモなどの虫(アブラムシを捕食する)からアブラムシを守ります。言うなればアリとアブラムシが「Win-Win」の関係となります。
⑶液を吸って枯れさせる
やがて、アリとアブラムシの相互的な共犯関係は、植物の汁を吸いつくし、枯れさせるようになります。しかもアブラムシはウイルスを媒介することがありますから、増える前に、あるいは見つけたその瞬間に退治しておくことが望ましいです。
そんな厄介な「アブラムシ」ですが、幾つかの対処方があります。
⑴少ないうちは手動で
アブラムシが数えられるうちは、テープなどを利用して物理的にアブラムシを除去します。
⑵忌避剤を利用
増えてきてしまったら「木酢液」や「竹酢液」を散布し、殺虫予防を行います。
⑶薬剤を利用
更に増えてきてしまったら、最終的には殺虫剤「オルトラン」や「ベニカ系薬剤」、「マラソン乳剤」などを利用します。
③食害性害虫
続いては「食害性害虫」です。これらの害虫には、ケムシやテッポウムシ、キクイムシなどが挙げられます。
キクイムシ(引用:病害虫・雑草の情報基地)
これらは、物理的に樹木そのものを食べてしまう害虫となります。ですから、見つけたら手動で取り除いてしまうのが最も効果的です。中でもカミキリムシの幼虫「テッポウムシ」は樹木そのものを食い荒らしてしまいますので、注意が必要です。
また、山椒や檸檬などの香りの強い葉には、必ずといっていいほどアゲハチョウの幼虫が付きます。
アゲハチョウの幼虫(引用:アース製薬)
これらの幼虫は、ミニ盆栽程度のサイズであれば、全て葉を食べつくしてしまうため、同じように取り除いてあげてください。しかし、アブラムシ等と違い、ウイルスを媒介することもほとんどありませんので、殺さずに別の場所に逃がしてあげると、綺麗なアゲハチョウになってくれます。
予防としては、彼らが付く前に忌避剤を散布することが出来ます。
④病害
続いて「病害」ですが、代表的なのは「炭疽病」「斑点病」「葉枯れ病」「すす病」などです。
これらウイルス性の病気における、最も重要な対処方は、圧倒的に「風通し」となります。カビが繁殖するメカニズムを思い起こしていただければ分かりやすいと思いますが、日当たりが悪く、風通しが悪い場所では、こういった病気も繁殖しがちです。ですから風通しを確保し、陽当りも確保することが重要です。
中には樹木が罹患した時点で薬剤散布により防ぐこともできます。症状に合った薬剤を利用してください。
また広葉樹に多くみられる「癌腫病」やバラ科樹種に多くみられる「根頭癌腫病」にも注意が必要で、この場合は早急な切除が求められます。
初心者の方がまず注意すべきは「アブラムシ」となります。そして、その他の病気を回避する最も良い方法は先述した通り、陽当りと風通しが有効です。
是非これらに気を付けて、健全な培養をしてください。
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