2023年6月某日に、カモメランが自生する某山へ足を延ばしてみた。するとカモメラン以外にも貴重な植物が自生しており、この山域の豊かさに驚かされるばかりであった。
こちらは姫無葉蘭(ヒメムヨウラン)であろう。ギンリョウソウと同じく菌従属栄養植物の一種で、亜高山帯の針葉樹林に生育する。謂わば腐生植物であるから、葉緑素を持たず、光合成を行わない。環境省RDB、山梨県RDB共に絶滅危惧Ⅱ類となる。
あまりに小さいため、一眼レフでも収めることができなかった。
そしてこちらは深山唐松(ミヤマカラマツ)。夜空に花火を散らしたようなフォルムが印象的である。この山域では、群落と呼べるほどの群生はなく、片手に収まるほどの個体数しか見かけなかった。
黄花の駒の爪(キバナノコマノツメ)は、北極を中心とする環状に分布する。スミレ科の植物であるが、和名にスミレが付かない数少ない種である。
蔓白銀草(ツルシロカネソウ)は日本固有種のシロカネソウ属の多年草である。長野県では絶滅危惧Ⅰ類、山梨県ではⅡ類となる。
そしてお目当ての鴎蘭(カモメラン)は、薄暗く湿度の高い林床に群落を形成していた。鹿による食害と、人による盗掘で姿を消し、環境省RDBでは準絶滅危惧種、山梨を含む数多くの都道府県で絶滅危惧ⅠA~ⅠBに指定されている。
なお、山梨では「指定希少野生動植物種」に指定され、生きた個体の捕獲・採取・殺傷(損傷)を厳に禁じている。想像よりも遥かに小さく、俯きがちに咲いている。大変可愛らしい野生ランの一種である。
このように白花種もみることができた。
次に見かけたのは敦盛草(アツモリソウ)である。盗掘の被害に遭い続けているラン科植物の中でも最も激しく乱獲される種であり、多くの日本国内自生地で、厳重に管理されている。環境省RDBではⅡ類、種の保存法に基づき「特定国内希少野生動植物種」に指定された。野生個体群の存続については、もはや難しい状況にあるとみてもいいだろう。
青千鳥(アオチドリ)はラン科の多年草であり、多くの都道府県で絶滅危惧種に指定されている。無論山梨県においても絶滅危惧Ⅱ類となる。
こちらはこの写真を撮影した一週間後に再び観にいったが、既に跡形もなく消え去っていた。それが盗掘なのか鹿害なのかは不明である。
そしてその生存戦略として小さい個体が多い高山植物・山野草において、中でも大きな花を咲かせるのが、この山椒薔薇(サンショウバラ)である。日本固有種の野茨の一種であり、東部富士五湖周辺にしか自生しない。環境省RDBではⅡ類となる。
咲き始めは桃色で、陽が昇ってくると白色へ、やがてその日のうちに萎れてしまう一日花である。花弁は大変大きく、小さな個体が多い山野草・高山植物の中では大変にありがたい存在である。
この山域では、その他にも数多くの山野草を観ることができた。クサタチバナは大群落を形成し、ハンショウヅルやグンナイキンポウゲが茂っていた。
山荘の管理人をはじめとして、きっちりと保護・管理されているからであろう。しかし、聞くところによると、人の目が届かない夜間に盗掘する人が今も後を絶たないとのことで、そういった行為は厳に慎んでほしいところだ。
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