大菩薩連嶺全容図
大菩薩嶺(だいぼさつれい)
Date:6月17日
都道府県:山梨県
標高:2,057M
大菩薩嶺は山梨県の東部、広く解釈した場合は奥秩父山塊の南端となる大菩薩連嶺の主峰です。山梨百名山の他、日本百名山の一峰に数えられ、登山者以外からもその名を広く知られる名峰中の名峰として、圧倒的な存在感を放っています。
この山が全国的に名を知られるようになったのは、1913年から1944年にかけて長期連載された中里介山の未完大河小説「大菩薩峠」でしょう。大衆小説の先駆けとして発表された小説でした。また、「大菩薩」という名前からも分かる通り、修験者の山岳修行としても利用された歴史ある山域です。
特に、大菩薩峠と呼ばれるポイントは、江戸時代にかけて、武蔵国(埼玉)と甲斐国(山梨)を結ぶ甲州道中の裏街道であった「青梅街道」の最大難所とされていました。現在ではその街道としての旧峠が「賽の河原」として登山道地名として残っています。
1969年には現在も運営を続ける「福ちゃん荘」にて、赤軍派の軍事演習が行われ、警察に一斉逮捕されたことでも知られています。
幾度登りても飽きぬ
この山における一般的な登山ルートは「上日川峠」→「福ちゃん荘」→「唐松尾根」→「雷岩」→「賽ノ河原」→「大菩薩峠」→「上日川峠」です。僕は、このルート以外にも幾度となく足を運んでいますが、今回はこのルートに関連したことを書きます。
スタート地点となる上日川峠・ロッヂ長兵衛
引用「club.montbell」
まず、このロッヂ長兵衛から福ちゃん荘までは緩やかなアップダウンを繰り返し、唐松尾根に至ります。この尾根は、岩場を中心としたやや急な登りで、ここで標高を上げていきます。振り返ると、徐々に自分の足で歩いてきた軌跡が明瞭になり、景色も良くなってきます。しばらく登ると「雷岩」と呼ばれる、一塊の岩稜帯にぶつかります。
雷岩から望む甲府盆地
そして、ここから「賽ノ河原」を経て「大菩薩峠」と呼ばれるポイントへ至るのですが、この稜線歩きは、大菩薩湖と富士山を一つの視界におさめられる絶景が広がり、その視界の広さが特徴的です。空がどこまでも続いており、終わりが見えません。
雷岩→賽の河原→大菩薩峠に至る稜線からの景色を常に眼前にして、進みます。その道中は常に高度感があり、甲府盆地を見下ろしながら歩きます。晴れている日は、豊かな風が流れ、登山の醍醐味を十分すぎるほどに感じることができます。
賽の河原
左側が雷岩、右側が大菩薩峠
登山者は、いずれのルートを歩いても、必ずこの稜線を歩くことになり、ここからの景色は言葉にできません。森林限界を超えているため、視界を遮るものがなく、流石は日本百名山の一角としてそびえる大菩薩の良さがあります。
また、四季によって全く異なる表情を魅せるのも、この山の素晴らしい点で、冬の裸になった山々の連なりはただただ感嘆してしまいます。
秋の大菩薩嶺。より空気が澄んでいて、青が濃い。
そうして細かなアップダウンを繰り返す賽ノ河原の稜線を経て、大菩薩峠の標識に辿り着きます。ここには幾つかの売店があり、飲み物や食べ物を購入することができます。
大菩薩峠
総歩行距離も7キロ前後で、累積標高も500Mほどですので、初心者にも登りやすいうえに、あまりに見事な絶景を拝むことのできる優秀な山です。
一方で、その認知度の高さから、週末や連休などはかなり混雑する山で、静かに山歩きをするということには向きません。そういった登山をしたい方は、やや難易度・体力度共に厳しくなる裂石→丸川峠ルートでの登攀をお勧めします。また、この山に登る登山口「上日川峠登山口」「裂石大菩薩峠登山口」共に、週末は駐車場が混雑しますので、早出をお勧めします。
1 茅ヶ岳
参考:「山梨百名山グレーディング表」やまなし観光推進機構
山梨百名山について:OMOTE TO URA