植物を育てている方なら、いつかは到達するであろう「剪定」という壁。なんとなくその言葉そのものは知っていても、一体何のために「剪定」を行うのか?どこをどう切ったらいいのか?という疑問を本章で解決してまいります。
①剪定の意味
②剪定の方法
③剪定のタイミング
④剪定後に行うこと
⑤上級者の為の剪定
①剪定の意味
「剪定」とは、不要な枝を除去し、樹形を整えることを指します。
本来は枝を切る作業を剪定と呼んでいましたが、現在では花や茎、葉を切ることもまとめて「剪定」と呼称します。加えて枝を整える「整枝」、芽の先端を摘み取る「摘心」等の行為も含みます。
そして、その剪定の必要性は大きく分けて以下の通りとなります。
⑴見た目を良くする
⑵成長を促進する
⑶病害虫の対策
では順を追って説明していきます。
⑴見た目を良くする
まず盆栽における基本的な成長期は春から夏にかけてです。特に気温の上がる春以降、植物は知らぬ間にぐんぐんと成長していきます。この成長期に剪定を怠ってしまうと、見る見るうちに樹形が崩れてしまいます。
ミニ盆栽においては、特に樹形を維持することは大変重要な要素ですから、そのために「芽摘み」「葉刈り」などを行うことがほとんどです。(芽摘み・葉刈りについては別の機会に書きます)
⑵成長を促進する
次に剪定の目的となるのが「植物そのものの成長を促進させる」ことです。剪定というのは、つまるところ要らない枝や幹(不要枝)を切り取るということです。ですが、実際にはそれに伴い、
・風通しを良くする
・栄養を効率よく吸い上げる
という目的を持ちます。加えて、実物樹種においては、実の数を増やすための摘心を行い、脇芽を増やすことも行います。
⑶病害虫の対策
また剪定を行うことで、結果としてカビ予防になったり、様々な病害虫から植物を守ることができます。以前「ミニ盆栽の病害虫」で書きましたように、葉数を減らすことで風を確保することは、植物の健全な成長の上で欠かせません。
②剪定の方法
頂芽優勢を変更して脇芽を増やす
上図を参照してください。この植物は伸びきってしまった枝(徒長枝)の存在により、根から吸収する養分が偏っている状態になります。通常植物は頂芽(最も高く、先に延びていく芽)を伸ばす傾向(=頂芽優勢)があるが故に、他の箇所には十分な栄養が行き渡りません。
ですから、この徒長枝や頂芽を切ってあげることにより、養分を均一に巡らせてあげることができます。
また「不要枝」と呼ばれる枝は、きちっと剪定することで、後のミニ盆栽そのものの生育と姿を整えることができます。
不要枝
③剪定のタイミング
ミニ盆栽における剪定の時期は、基本的に「樹木により異なる」と言えます。しかし、裏を返せば年間を通していつでも行える、ということになります。ですが、強く枝を切り詰めたり、全体の樹形を整える為の剪定をしたりする場合、最適期は「冬」となります。
冬は植物の休眠期であることに加え、葉が落ちていますので、樹形全体を見やすいというメリットがあります。
一方で、桜は春の花後、すぐに花を取ってあげたり、モミジは秋の紅葉後、古葉を取ってあげたりすることで、次シーズンに備えた十分な体力をつけてあげます。
④剪定後に行うこと
剪定は「強剪定」と「弱剪定」に分けることが出来ます。枝を一、二本間引くくらいであれば弱剪定に入りますので、特別な保護は必要ありません。しかし、全体的に枝を落とし、葉を刈る(葉刈り)をした場合は、数日程度半日陰で休ませてあげることが求められます。
また、根を強く剪定した場合(根剪定)は、乾燥しやすい状態が続きますので、ミズゴケを根元に巻いて保護してあげるといいです。
ミズゴケ
⑤上級者の為の剪定
ミニ盆栽を本格的に培養し、例えば展示会などに出展する方々は、これら剪定の中でも、最も重要な「芽摘み」「葉刈り」「葉切り」を行う必要があります。モミジ、松、ケヤキ…ほとんどの樹種に対して行われるのが、これらの作業です。
これらの作業は、植物の生育と構造そのものに造詣がなければ出来ないことですから、これはまた別の機会に詳述しようと思います。