僕の好きな作家の一人に町田康がいます。そんな彼が発表した短編小説「ゴランノスポン」の一節にこういった一文があります。
”お金持ちの人は豪邸に住んでいる。僕は六畳にキッチンが付いたアパートに住んでいる。//中略//そんなことになった根拠は暴力で、つまり人間が猿とあまり変わらなかった頃、喧嘩の強い人が、「ここは俺の土地だ。断りなく住んだり耕作したりしたらあかん。きいいいっ。きしきしっ」と言って弱い人から年貢や地代をとったのだろう。その延長として僕も毎月、家賃を払い続けているのだ。むかつく。”
ユーモアに溢れる名文に他ならず、物語はあるまじき方向へと進んでいく狂気的な小説なのです。
そしてこの小説で描かれる「僕」側の方、つまり植物を育てようにも広い庭がないという方に朗報です。ミニ盆栽はその名の通り「ミニ」であるわけですから、庭がなくても土地がなくても育てることができます。つまり、ベランダや小さなスペースさえあれば大地主になれるということです。一般社会の大地主になるのはめちゃくちゃ大変ですが、ミニ盆栽界の大地主になら誰でもなれます。
①ミニ盆栽の定義とは
②もっと小さい豆盆栽
③「カワイイ」が勝つ
①ミニ盆栽の定義とは
そもそも「植木」と違い、美学に基づき樹形を構築していく盆栽には、様々な定義があります。その定義は時に「樹形」、時に「樹種」によって変容していくものです。
「樹形」による盆栽の種類
一方で「サイズ」による盆栽の定義も存在します。下図を参照してください。
「サイズ」による盆栽の種類
これら幾つかの種類の中で、OMOTE TO URAが仕立てて販売しているのは全て小品以下のサイズとなります。中でも「ミニ盆栽」「豆盆栽」を中心に据えています。
「ミニ盆栽」の定義は、基本的には「掌に一つ」とされます(それぞれの流派や考え方によって異なります)。大きい盆栽よりも仕立てるのは遥かに楽ですが、一方で多くの方が自分の手の上に載せて360°から見ることが出来ますので、意外にも樹形は重要なポイントです。
ミニ盆栽(OMOTE TO URA)
②もっと小さい豆盆栽
そして「ミニ盆栽」の中でも、更に小さなサイズのものを「豆盆栽」、更に小さくなると「超ミニ盆栽」などと呼ぶことがあります。
「ミニ盆栽」の定義が「掌に一つ」だったのに対し、
「豆盆栽」の定義は「掌の三つ」とされます。また、「手の指二本で持てるもの」ともされます。
豆盆栽(OMOTE TO URA)
これらの豆盆栽は、大きい盆栽に比べると、確かに樹齢は若いものが多いです。しかし、それでも小さく小さく持ち込んで樹齢を5年、10年と経ていくことができます。「樹高が低いのに、木肌は縦割れ(※)を起こし、全体的に古くみえる」ことを目指し、日々の管理を行っていくのは、大変に楽しい作業です。
(※縦割れ:樹齢10年前後になると、樹皮が古くなり割れてくること)
また、こういった小さい「豆盆栽」であれば、冒頭申し上げたように一畳に対し、相当数のミニ・豆サイズを収容することができますので、大してスペースを取りません。
③「カワイイ」が勝つ
既にお分かりいただけたかと思いますが、ミニ盆栽、豆盆栽はとにかく「小さい」のが特徴です。そして、大きくすることを良しとはしません。出来るなら一年に数回剪定を行い、太いままで小さく小さく持ち込みます。
ですから、盆栽をはじめようと思っている方にとって「スペース」を気にする必要がなく、全ての人が等しく始められるのです。マンションやアパートに住んでいる人も、沖縄に住んでいる人も、北海道に住んでいる人も、誰もが気軽に始めることができます。
そして、大品(大物)盆栽が自然の荘厳さや厳しさを表現するのに対し、ミニ・豆サイズは何よりも「可愛い」のが特徴です。
掌に乗るサイズの盆栽を、是非初めて見てください。
なお、5月後半より22S/Sの2nd DELIVERYがスタートいたします。興味のある方は是非チェックをしてみてください。