B’z
IN THE LIFE
1991
B’zにおける第一次TP
本作「IN THE LIFE」は1991年、B’zの5作目オリジナル・アルバムとしてリリースされました。前年にはアルバム「RISKY」とシングル「太陽のKomachi~」をリリースしていたB’zですが、本作「IN THE LIFE」を以てして、ポップスの旗手としてシーンに”サヴァイヴ”していくのか、ロックバンドとして”サヴァイヴ”していくのかの、重要なターニング・ポイントとなったアルバムでした。
ご存知の通り、極初期のB’zは小室哲哉からの影響を隠さず、TM NETWORK的なアプローチを楽曲そのものに応用していました。一方で、本作が見つめるのは”ロック”であり、J-POPとロックの隙間を縫うようにして、特異なB’z的アプローチを確立していったのも本作でした。RISKYの80年代ディスコティックなジャケットからは想像もつかない、セピア色に包まれたIN THE LIFEのジャケット。彼らの「やりたいこと」が徐々に世間の目、耳に届き始めた作品です。
US・HRからの影響
既に前章でも書きましたが、実はこの一年(RISKY:1990~IN THE LIFE:1991)の間に、彼らの音楽性はかなり変わっています。当然M4「憂いのGYPSY」はWhat It Takesの日本語Verかと見紛うほど、そして極めつけはM10「ALONE」のMötley Crüeっぷりでしょう。前作RISKYにおいても、洋楽ロックからの影響は随所に感じられますが、本作ではその傾向がより強くなっていきます。また、サウンドはより深化していき、渇いたアメリカン・ハードに帰結していくバンドとしての矜持がみられます。
個人的にはこれらを完全にB’zとして咀嚼し、昇華しきってしまったのが「SURVIVE」、完全無比なHR/HMバンドとして突出したのが「Brotherhood」であると思いますが、その前哨としての魅力にあふれる作品がIN THE LIFEだと感じます。M5「Crazy Rendezvous」では直接的に”マーヴィンゲイじゃなくてエアロのビッグサウンド”と表現されており、この時点でB’zは往年のHRからの影響を隠さなくなり、後のRUN、The 7th Bluesとアメリカン・ブルーズ色の濃いアルバムをリリースしていくことになります。
無論、M2「 TONIGHT(Is The Night)」M6「もう一度キスしたかった」などのポップなメロディ展開とサウンドを聴かせる楽曲もありますが、様々な音楽ジャンルを吸収、飲み下し、「B’z」として思いきり吐出するだけの音楽的裾野の広さを持つ松本孝弘は、稀代のメロディメーカーでもあることが分かります。
一方で00年代以降も続いていく稲葉詞における特徴的な暗喩とネガティヴな要素は、タイトルにも顕れることになります。M1「Wonderful Opportunity」というオプティミスティックなタイトルが存在する一方でM6「もう一度キスしたかった」M8「それでも君には戻れない」などの、ワンフックある楽曲を構成していく言葉の存在。これを「もう一度キスしたい」「君には戻れない」としないところが、作詞家・稲葉浩志としての真髄であり、情景の背後にあるあらゆる事情を想像させる優れた詩人ということも理解出来ます。