Rock

OMOTE TO URA的2019年ベストアルバム 洋楽編

 

2019年もいよいよ終わりに差しかかり、2020年が始まろうとしている。そこで今回は、2019年のベストアルバム[洋楽編]をOMOTE TO URAが選択していきたい。[邦楽編]はこちら

コールドプレイやベックなどといった大御所的ミュージシャンに加え、ヴァンパイア・ウィークエンドなどの話題作が相次ぐ中、いくつかのアルバムをOMOTE TO URAがピックアップしました。

Apple Music Playlist by OMOTE TO URA


【選択の条件】

・2019年1月1日から2019年12月2日(記事執筆現在)までに発売されたミニアルバムを含むオリジナルアルバムとする。
・[洋楽編]は基本的に日本国外のミュージシャンで、掲載は順不同とする。

【選択の基準】

・知名度の高低や、音楽フリークからの評判、トレンドなどはあまり考慮せず、あくまで自分自身が良いと感じたものとする。
・「良いと感じた」というのは、何度も繰り返し聴けることや、アルバム全体の流れにまとまりがあり、違和感を感じないもの。

【※】

・洋邦で分けて考えることにあまり意味はないと思うが、一つの記事が冗長になってしまうので、このような分け方をした。
・個人的な気分としてガレージ寄りのロックを2019年中盤からよく聴いていたため、そちら寄りのアルバムが多い。ご了承ください。


 

 

 


Cage The Elephant / Social Cues
release:2019.4.19

突出した楽曲はないものの、アルバム全体としての流れが非常に巧妙で、ロー・ファイなガレージっぽさを残しながらも内省的。評価は二分されているとのことだが、2019年洋邦合わせて最も聴いたアルバム。アメリカのロックバンドという意識(聴く側の)もありながら、どこかUKっぽさを持ち合わせたアルバムで、全体に通底するネガティブでありながらエモーショナルなニュアンスが素晴らしい。

静謐ながらも激しい衝動が感じられ、とあるウェブサイトでは彼らの音楽性を「レッチリ + アークティックモンキーズ」と形容。しかしその形容の頃よりも、遥かにガレージっぽさが強く、ハネた感じも見受けられる。投げやりな印象がありながらも、カラッとしたロックン・ロールを感じられました。素晴らしいアルバムです。

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Billie Eilish / WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?
release:2019.3.29

かつてニルヴァーナが突如シーンに降り立ち、グランジを確立・牽引した現象のポップ版が今起こっている。ポップ・ミュージックはビリー・アイリッシュを境界にして新しいフェーズに突入したと思わざるを得ない。私はとっくの昔に思春期というものを脱しているし、だからこそセンチメンタルな「何か」や、精神的な代弁者は必要ないのだけれど、我々以降の世代には懐かしくも新鮮。日本のティーンエイジャーには響くだろうと想像する。

2019年を代表する曲となった「bad guy」も秘められた狂気と、The 1975的ニュアンスのネガティブな「ロック感」が存分に感じられ、アナーキーな印象さえ受ける。ミニマリズムに通ずる究極的な「無駄な音の省き」は、サブベースと狂気とポップさが共存する新しいタイプの音像。19年を代表する一枚だと思います。

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The Chemical Brothers / No Geography
release:2019.4.12

4年ぶり9枚目の危険なアルバムだ。バッキバキの尖ったビートに、日本語が入り込む。知らない間にケミカルブラザーズの打ち出す新鮮ながらも原点的サウンドの虜になっている。サイケポップ的楽曲もあり、グルーヴも見事ながら、どこか柔和な印象を受ける。「暴力的なサウンド」という核を、語弊があるかもしれないが、彼らの人間性や優しさで包んだ作品。

特筆しておきたいのは、このアルバムは「音楽」というそもそものロジックを思い起こさせてくれるような作品ということ。聴いていて楽しい、カッコいいとかいう「感覚」を呼び覚ましてくれる作品で、流石はケミカルブラザーズ様様といった印象。「ぶちあがる」という表現があるが、まさにその言葉を体現してくれる。来日楽しみです。

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Desert Sessions / Vols,11&12
release:2019.10.25

下記Eagles of Death Metalでも出てくるQOTSAのジョシュ・オム率いるデザート・セッションズの16年ぶりの新作。このデザート・セッションズはジョシュ・オムとその友人たちが日常の喧騒や快適さから身を切り離すために、砂漠が広がるカリフォルニア州ジョシュア・ツリーを訪れたことから始まると言われている。

しかし今作はそのコンセプト的立ち位置を思い返しても違和感しか感じられない内容で、それはこのアルバムがまさに日常の喧騒や快適さを体現しているからだ。セッション的ニュアンスを保ったまま、ロックン「ロール」の行く先を不安に思うこともなく、ロックの高尚さをアピールするわけでもない。日常の音の集積がこのアルバムであり、そこには心地よさしかない。32分と短いアルバムだが、これがベストの長さ。良いアルバムでした。

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BRING ME THE HORIZON / Amo
release:2019.1.25

デスコア時代の名残を残したまま、美しい形で以てメイン・マーケットに落とし込むことが出来るバンドであると確信したBMTHの6作目。ハウス、ダブなどのEDM経由の音像をヒップホップ的フックでまとめあげた快作で、ロック・バンド故の様式美がアルバム全体に滞ることなく流れていると感じられる。

案の定、世論は二分され賛否両論といった様相だが、彼らをはじめとする数多くのバンドがHR/HM初期の音をそのまま鳴らしていたならば、若いリスナーたちの耳からはどんどんロックやメタルが消えていく。そういう意味において「新しい」作品で、打ち込みを多用し、中にはニュー・メタルとポップスを折衷したような多様性がみられる。安易なエレクトロニカ融合サウンドバンドは数あれど、きっちり自分たちの音にそれを昇華できるのは凄いとしか言いようがない。

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Lana Del Rey / Norman Fucking Rockwell!!!
release:2019.9.4

あまりドリーム・ポップやサッド・コアなるジャンルに興味はなかったのだが、このアルバムはそのジャンルという退屈さの極みを通り越してくれる。ビリー・アイリッシュとタイプこそ違うものの、余韻が後に残る。暖炉の火やろうそくの火のような温かみのある優しい火を想起させ、音数が少ない中にもラナ・デル・レイの冷たい声が通っていく。ジャケットからは想像もできない音。

そして何より日常という空間の中での「非日常」の演出が巧みすぎる。長尺アルバムではあるものの、タイトな音像と現代的なプロダクションによって、長さを感じないアルバム。「疲れた時に聴きたい」というと、王道な表現になってしまうが、そのシチュエーションが最もマッチしている。素晴らしかったです。

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Foals / Everything Not Saved Will Be Lost Part 1
release:2019.3.8

二枚組となるアルバムのパート1。アルバムとしての流れも素晴らしく、聴き疲れもしなく、ミニマルな印象の傑作。ストリーミングによって、アルバム・パッケージの「意味」のようなものが崩壊・模索されている2019年において、まごうことなき「名盤」と呼べる作品ではないかと感じる。最初に聴いた際は大味のような印象もあったが、聴きこむうちにその繊細さと機微に驚くばかりであった。

特にOn The Lunaの新たな定番となりうる、強い曲は必聴です。Part2は全英一位となりました。2020年には来日予定とのことなので、是非足を運んで観てください。絶対楽しいと思います。

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Slipknot / We Are Not Your Kind
release:2019.8.9

ロックというジャンルが生み出されたころの政治的な衝動を思い起こさせるかのような強烈な一枚で、メンバー内の世界で起きたネガティブなモノゴトが、哀しくもプラスに働いている。怒り、悲しみ、悩みといった、自分の「内」の衝動を、社会、政治、コミュニティなどの「外」と対比させることで生まれた決定的作品。

コリィ・テイラーの強烈なヴォーカルもさることながら、「猟奇趣味的激烈音楽集団」というコピーたる所以をこのアルバムにて再確認した次第だ。日本におけるこの安定的な人気も、彼らの持ち味であるハードかつメロディアスという一種の条件が続いているからだろう。スラッシュメタルに起因する疾走感はないものの、粒が立っていてとにかく嬉しかった。素晴らしいアルバムです。

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Eagles of Death Metal / EODM Presents Boots Electric Performing The Best Songs We Never Wrote [Explicit]
release:2019.6.7

ふざけんじゃねぇ、と言いたくなるほど長いアルバムタイトルではあるが、能天気で格好いいカバーアルバムである。Them Crooked VulturesやQOTSAのジョシュ・オム派生ロックバンドが盲目的に好きなので聴いてみたものの、非常に好きなタイプのアルバムである。ただし、「名盤」「名作」という類の作品ではないことも確かで、只々、日常の中にあるロックとしては秀逸ということになる。

全体的に漂うそこはかとないポジティブなカラーが、彼らの音の渇き具合と相まって、とにかく良いのです。夏の日の夜、ビアガーデンでビールを飲みながら聴きたいアルバム。

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The Black Keys / ”Let’s rock”
release:2019.6.28

個人的に2019年のナンバーワンにあげたいアルバムがブラック・キーズの「Let’s rock」だ。ロックバンドが「rock」という言葉をアルバムに持ってくることは非常に難儀なもので、かつて76年にエアロスミスが「Rocks」を発売した時のような緊張感を覚える。しかしながらこのアルバムはそのタイトルに負けることなく、前作「Turn Blue」よりも聴きやすくなった、正真正銘のロック・アルバムだった。

パトリック・カーニーのインタビューをどこかで読んだのだが、その際彼は「俺とダン・オーバックが揃えば、必ずブラック・キーズの音になってしまう」と答えていた。その言葉通り、うねるブルース・グルーヴに絡みつくガレージ・リバイバルの底なしの格好良さがキマっている。懐古趣味的ガレージ要素を、驚くほど新鮮なサウンドプロダクションで魅せる。マジでカッコいいっす。

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いかがだったでしょうか。個人的には2019年はガレージアルバム、特にケイジ・ジ・エレファントとブラック・キーズをよく聴いた一年でした。ある程度のキャリアを積んで、深みのある味わいに痺れました。一方ビリー・アイリッシュのワールドワイドなヒット、スリップノットのプライド、BMTHの底力、素晴らしかったです。

「ロックは終わった」なんて台詞はもう食傷気味ですが、やっぱりロックはカッコいい。

「なんだ、ロック、まだまだカッコいいじゃん」という気持ちになった2019年でした。2020年はSUM41、クイーン、FEVER333、フォールズ、ニュー・オーダー、グリーン・デイなどが来日します。皆様も是非、たくさんの音楽に触れてみてください。


この度はコンテンツをご覧いただきありがとうございます。
次回もよろしくお願いいたします。

ワダアサト
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