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本当につまらない邦画10選 Vol.2

前回、といっても2018年12月のことになりますが、「本当につまらない邦画10選」なる記事を公開しました。結果として現在に至るまで、多くの方が、何らかのキーワードを打ち込んで読んでくださっているようです。ありがとうございます。

そこで今回は、僕自身の邦画記録もなかなかに溜まってきたので、ここ数年で観たものを含めて第二弾を公開することとしました。あくまで弊社OMOTE TO URAはその言葉の通り、「裏」を重要視しているので、ネガティブなことも書いていきます。ご了承いただいた上で読み進めていただければ幸いです。

批判や評価はなんの意味もなさないと考える方はブラウザバックをお願いします。またここではあらすじを書くことはしません。

 

《選定の条件》

・2019年12月現在(記事執筆日:12月1日)までに公開された邦画で、比較的近年のもの。実際に映画館に足を運んで観たものに限る。

 

《選定の基準》

・中には「つまらないが一周回って面白い」というような作品もあるが、ここで書くのは基本的にはそうではないものを指す。

・原作がある場合、原作との乖離や創意などを考慮せず、あくまで映画単体として考えることとする。

・何を以てつまらないとするかは個人の感覚や価値観に拠るものだが、ここでピックアップするのは怒りを感じるようなもので、「一定の考慮の余地すらない」ものとする。

 

 

①22年目の告白 ー私が殺人犯ですー
入江悠監督 2017


(出典:https://ciatr.jp/topics/195948より)

このタイプの映画の題材は、恐らく非常に面白いサスペンスものになりそうだと想像します。そして本作においても、サスペンスの基本的な要素である仕掛けや伏線回収は成功している方の邦画ではないでしょうか。しかし、本作を黒沢清や白石和彌に撮ってもらったらどうなるのだろう、と思わざるを得ませんでした。

この映画の欠陥は「リアリティの欠如」であり、我々が住んでいる日本社会は、表面的であっても殺人犯を英雄のように仕立て上げることはありません。そして何よりも結末を迎えてもなお「はい、で?」という印象しか抱けませんでした。怒りを感じる程、つまらない映画ではありませんが、特に印象に残りもしない映画でした。

 

②十二人の死にたい子どもたち
堤幸彦監督 2019


(出典:https://movies.yahoo.co.jp/movie/365575/より)

ここ三年、いや五年の間に観た邦画の中で、最もつまらないのはこの作品です。「映画」或いは「邦画」などと呼ぶことすら憚れるようなもので、監督、キャスト、その他スタッフ、脚本家はこのような作品を世間に出すことを恥ずかしくは思わなかったのでしょうか。非常に疑問を感じます。こういった作品に文字数を割き、読む方の時間、書く側の時間を浪費したくはないのですが、これについては批判する責任として書かせていただきます

まず、この作品が上映前から行っていたプロモーションでは、センセーショナルなミステリ・サスペンスものであるかのような打ち出し方をしていました。あらすじとしては、

”死にたい子どもたち12人が、みんなで集まり集団自殺を試みる。しかしそこには見知らぬもう一体の遺体があり…”

というものであり、キャッチも「死にたいけど、殺さないで!」という衝撃的な謳い文句でした。しかし、この映画ではそういった殺し合いは一切起きませんし、そもそもミステリ・サスペンスの体をなしていなないものです。

そして何よりも、薄っぺらい理由で「死にたい」と決意した若者たちは感動し、結果的に「死なない」つまり、生きることを選択するのです。くだらなく、どうでもいい会話が永遠と続く拷問のような映画と言えます。キャストの演技も見れたものではありません。

この映画に携わった者達は「死」や「生きること」について、何も考えたことはないでしょうし、世間や社会には実際に自殺という行為に至る人がいるということを「知らない」のではないかと思わざるをえませんでした。「期待外れ」などということばでは語れない、価値無き映画です。

 

③ヘルタースケルター
蜷川実花監督 2012


(出典:https://movies.yahoo.co.jp/movie/341728/より)

強烈かつ鮮烈な絵面です。確かに蜷川実花が得意とする色彩感覚で、眩い閃光を放っているっぽい映画です。しかし、それ以上でもそれ以下でもありません。写真だけ撮っていればいいのではないでしょうか。

一見すると中島哲也的フックがありそうで、実はありません。この監督に狂気の表現は不可能です。アーティスティックやコンセプチュアルを含めた芸術を言い訳にしすぎた陳腐なマスターベーション的作品で映像も音も陳腐です。「こんな感じが狂気的、芸術的でしょう?」という底の浅さが露呈してしまっています。

セックス、ドラッグ、芸能界、整形、闇。こんなものの表面だけを切り取って、深みをみせようとしないでほしいものです。話題の太宰映画に「禁断の恋。ヤバい実話。」とつけるところからして、浅すぎます。

 

④溺れるナイフ
山戸結希監督 2016


(出典:https://www.amazon.co.jp/より)

意図していたとしても、意図していなかったとしても退屈な作品であることに変わりはありませんが、一概に「つまらない」とは言い切ることのできない作品であります。

ただし「素晴らしい!」とか「よかった!」という類の映画ではないことも確かで、あらゆる欠陥が滲み出てくる印象を拭いきれない映画でもありました。そしてそのことが映画鑑賞中から漂ってしまい、いまいち入り込むことのできない世界で興ざめさせられる印象です。

前半は思春期特有のセンチメンタリズムや、彼ら主人公が抱く何処にも発散できない感情などが上手に発露しているとも思えましたが、後半部分はリズムの悪さにいらだちを感じました。半ばセンスの悪いPVのようになっていたことが残念で、劇中に使われる音楽は芸能事務所の命令で使っておらず、制作人独自の起用ならばあまりにナンセンスでしょう。

それに心理的描写や始終鳴り続ける不快な音楽、極端なドラムスなどが響き、壮大な雰囲気を見せたいのだろうが空回りしていて、一言で言えば「イタい」お言えます。音楽はこの映画にとって完全なる蛇足でしかありません。加えてワンカットワンカット、無駄な描写が多く笑ってしまいました。

とは言え、冒頭書いたように「一概につまらないとは言えない」のも、また確かです。というのはこの映画の表現するところの感情を多かれ少なかれ、どこかの若者は持っているはずで、それをアート性などに逃げずに誠実に描き切っていたら、この映画の他者評価も大きく変わっていたことでしょう。

キャスとの存在感に強く頼った、放任的な映画でした。

 

⑤サンブンノイチ
品川ヒロシ監督 2014


(出典:https://movies.yahoo.co.jp/movie/346673/より)

面白くない。つまらない。スベってる。

 

⑥カメラを止めるな!
上田慎一郎監督 2017


(出典:https://movies.yahoo.co.jp/movie/363764/より)

絶賛、絶賛、絶賛に次ぐ絶賛。これだけ称賛を浴びた映画をつまらないと言うと、まるで見る目がないように思われそうで怖いのですが、一言で申し上げると「公開媒体がYouTubeだったら完璧!」というところでしょうか。

これは映画というものにそもそも何を求めているか、評価軸をどこに設定するかという話でありますが、だからこそ「面白い!圧倒的な最高傑作!」と褒める人がいるのも十二分に理解できます。一方で「低予算」「キャストの知名度」などを考慮して、「どれだけこの制作陣が努力したのか、お前ごときに理解できるか」という声があるもの分かりますが、はっきり申しあげて表現物に「低予算だから」「努力したから」などということは関係ありません。

 

⑦ミュージアム
大友啓史 2016


(出典:https://movies.yahoo.co.jp/movie/354843/より)

まず、一言。サイコパス、ナメてんですか?という話であって、そもそもサイコパシー人格の怖さがまったく表現されていない点が残念極まりないです。悪の教典のハスミン(伊藤英明)、熱帯魚の村田幸雄(でんでん)、クリーピーの西野(香川照之)に次ぐ強烈なキャラクターにはなりませんでした。

このストーリーに出てくるカエル男は、数人の屈強な男性で取り押さえることができるくらいの怖さで、精神的怖さよりも物理的怖さや肉体的怖さが勝ってしまいます。緊張感や迫りくる恐怖感が皆無で脚本的な瑕疵も目立ち、非常に面白くない映画です。眠くなる作品で退屈。

 

⑧全員死刑
小林勇貴監督 2017


(出典:https://www.amazon.co.jp/より)

つまらない映画は総じてほとんど印象に残らないものでありますが、その代名詞とも言える映画がこの「全員死刑」です。

期待の新人監督という謳い文句がありながら、熱帯魚(園子温監督/2010)の制作人が集結ということにもかかわらず、よくもこんなに平べったい構造の映画が作れたなという印象です。無駄なポップ調、題材へのアプローチ不足が顕著で、心理的にエグみのある描写が、自動的に胸糞悪い系の映画になるわけではありません。

 

⑨ソロモンの偽証
成島出監督 2015


(出典:https://movies.yahoo.co.jp/movie/348862/より)

家庭内暴力、学校という組織の旧態依然とした体質、いじめ、自殺。これらの要素を複合してなお、つまらない作品を作るのは、ある意味で才能なのでしょうか。結論も浅はかで、取っ散らかっている印象しかない映画です。あらゆる要素を詰め込んでいったおかげで、結果として本質が蔑ろにされてしまった印象です。

この映画は監督、キャスト、脚本家、スタッフの皆様が学生なのかしらと思うほどに稚拙です。前編・後編に分けた割にはカタルシスも皆無で、感動の押し売り的で、無駄に長いと思われます。「そんなにつまらないなら、観てみようかな」層さえも落胆させるような出来の悪さで、主題歌に起用されたU2に謝罪する必要があるのでないでしょうか。87年の名盤を汚すおつもりなのでしょうか?

 

⑩去年の冬、きみと別れ
滝本智行監督 2018


(出典:https://www.excite.co.jp/news/より)

自己陶酔の極み。へたくそな演技。深夜ドラマだとしてもたいそうつまらなく、観客からお金を取っていることそのものが違和感でしかありません。「観る人全員騙される」としても、だから何なのかという話です。

 

まとめ


いかがだったでしょうか?つまらない邦画10作品を挙げさせていただきましたが、私個人の考えとしては「②十二人の死にたい子どもたち」以外の映画は基本的に「観てよかった」と考えています。「つまらない」の中には、様々な表現が隠れていて、「つまらないなら、観てみよう」層も存在することも確かです。

「つまらない」ことだって、一つの意見であり、その映画をきっかけに様々な人が多様な意見を交わしていくことこそが、まさに面白いのだと思います。だから、私が「つまらない映画」とひと括りにした作品も、誰かにとっては「面白い映画」になりうることだって勿論あります。

だからこそ、「つまらないなら観なくていいか」ではなく、「つまらないなら観てみるか」という心意気になっていただければ幸いです。


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