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世界は北野映画のなにを評価したのか

 

芸人・ビートたけしが映画の神に愛され、「世界のキタノ」と呼称されたのは、なにも彼が権威的で大御所的なポジションに位置する芸人だったからではない。

北野武は、確実に日本映画に欠かせない存在となり得、その地位を本質的に評価されてきたからにすぎない。邦画史を語るうえでは外せない存在、Takeshi Kitano。そんなたけしがはじめて監督を務めたのは「その男、凶暴につき」だった。今日はそんな彼の映画について言及していきたい。

 

①その男、凶暴につき

②世界的評価を得たソナチネ

③HANA-BIで金獅子賞を受賞

④BROTHER~座頭市

⑤アウトレイジでのエンタメ世界

⑥キタノブルー

 

 

 

①その男、凶暴につき


当時の若者にとってセンセーショナルだったバトルロワイヤル。その監督は、かの深作欣二である。その深作欣二が監督を務める予定だった映画こそ、この「その男、凶暴につき」だ。

(出典:http://eiga-suki.blog.jp/より)

当初、深崎欣二は原案・奥山和由の出したアイディアに納得がいかず、時間を取っていたものの、スケジュール調整ができず、結果としてビートたけしが初監督を務める運びとなったという逸話つきの映画だ。松本人志も敬愛する作品なのだが、それならば松本人志ももっと面白い映画が作れるはずじゃないのか…

 

特筆すべきは…

この映画で特筆すべきは、徹底的な「画」の美しさにある。映画というものは小説と違い、画面上で観客にそのストーリーを直接的に見せることが出来る。そしてこの映画は、作中常に、一貫した冷たい美しさが貫かれている。ビートたけし演じる我妻は、警察官でありながら暴力を振るうし、最終的には人を殺す。そんな場面さえ、構図、色、雰囲気、全てが美しい。そしてフランス的映画の構図を、映画フリークは大きく評価した。

それに、台詞の量は極端に少なく、「画」で見せる強さを持っている映画だ。この映画には理性や倫理観は一切ないし、あったとしてもそれを上回る圧倒的な恐れや孤独といったネガティブなものがそれを包んでしまう。これこそが、北野武の描くリアリズムであり、ある意味で俯瞰的立場のように思える。

 

エンターテイメントとしてはどうか

北野武が商業的に映画で成功を収めるのは、ずいぶん後の「アウトレイジ」である。つまり、この処女作「その男、凶暴につき」から、アウトレイジの前作である「アキレスと亀」までは数字が芳しくなかったということだ。言い換えれば、北野武の映画はアウトレイジ以前において、エンターテイメント的ではなかった。「楽しかった」「ドキドキした」「悲しかった」「感動した」といった感想は、ほとんど出てこないようなコンセプチュアルな描き方で、物語は終結してきた。

 

 

②世界的評価を得たソナチネ


北野映画4作目の作品が、この「ソナチネ」である。

(出典:http://yodoshi-camp.sakura.ne.jp/より)

 

その評価

ソナチネでは北野武の作家性が確立され、芸術性の強い作品となっている。1994年にはロンドン映画祭、カンヌ国際映画祭で上映され、高い評価を得た。またクエンティン・タランティーノの絶賛、イギリス・BBCの「21世紀に残したい映画100本」に、黒澤明、小津安二郎などと共に選出され、映画監督として確固たる地位を築く。

 

バイオレンス

北野映画の一つの特徴が「バイオレンス」である。エンタメ感満載なアクション的バイオレンスではなく、究極のリアリズムに基づいた北野映画独自のバイオレンスは、派手に描くこともなく極めて狂気的で静謐なスタイルを貫いている。そのことによって本作は、北野映画にバイオレンス、高い芸術性を求める人々からの評価は軒並み高い。

 

 

③HANA-BIで金獅子賞を受賞


第54回ヴェネツィア国際映画祭に出品された北野映画七作目の作品。内容はまたしても暴力描写の多いものであるが、このHANA-BIをきっかけにし、北野武は世界的で絶対的な監督としての評価を確立していく。

 

一言で言ってしまえば…

この作品を一言でまとめるとしたら「ただただ傑作」となる。しかしその傑作の中身は、極めて高度な映画的なセリフ回しと芸術性にあると言える。本作を自身の映画の最高位に位置付ける人も多かろうと想像するが、本作は台詞での状況説明はまったくしていないし、そこにあるのは「阿吽の呼吸」であり、雰囲気だけなのだ。

 

菊次郎の夏に続く

そしてHANA-BIで絶対的な地位を確立した北野武は次作「菊次郎の夏」でもまた、陰鬱で寂し気な映画を撮ることとなる。最初期からアウトレイジ以前までの北野映画の根底にあるものは「印象だけが残る」ということであり、観る人はその圧倒的で超残酷的な「現実」に目を奪われるしかないとも言い換えられる。

そして菊次郎の夏でももちろんのこと、この北野映画が見せる全てのものは「独立」したものであり、埋もれない精神性を持ち合わせている。つまり、「あんな映画もあったな」と言った記憶の産物に成り下がらない作品であるということだ。

 

 

 

④BROTHER~座頭市


2000年代に突入しても北野武のその制作意欲は消えることがなかった。2001年にはBROTHERを、その翌年には山本耀司の衣装も話題になったDollsを、2003年には勝新太郎が主演を務めた「座頭市シリーズ」を題材として、同名映画を手掛けていった。

BROTHER

BROTHERでの特筆すべき事柄は「演出しない演出」ということである。徹頭徹尾、これに尽きる。近年、半ば大量生産的に上映される数々の恋愛映画とは違い、シンプルでありながら内容は薄まっていない渾身の一撃を魅せた。

また衣装は山本耀司が担当し、これがまた抜群にカッコいい出来栄えとなっている。もはやヨウジの代名詞となった黒を集中的に使うことで、この映画の持つ雰囲気を各段に分かりやすく、そして今っぽい言葉で言えば「エモく」させている。

BROTHER(出典:http://www.dmm.com/より)

 

Dolls

そしてこのDollsでは、同じく山本耀司が衣装を手掛け、言ってしまえばyohji yamamotoのファッションショーとなりそうなところを、たけしは絶妙なラインで「映画」としての体裁を保つ。今作を北野映画の最高傑作と位置付ける人も多いと思われるが、今作は純日本文学的な内面の美を魅せる。

また日本の四季を規則正しく描き、抽象的な映像美はまさに純日本といった画面で、海外からの評価も軒並み高かった。

Dolls(出典:https://buyee.jp/より)

 

 

⑤アウトレイジでのエンタメ世界


秀逸なコピー「全員悪人」を携え、北野武が本格的なエンターテイメント映画の製作に取り掛かったのは、このアウトレイジからである。ビートたけしが日本のお笑いにおける絶対的な地位を確立してから、随分と時間は経ったものの、本作も一定の評価を受けた。そしてその評価は、映画評論家や映画フリークのみならず、一般消費者にもその映画の「おもしろさ」が伝わったと言える。

(出典:https://movies.yahoo.co.jp/movie/より)

 

やっぱりドンパチが楽しい

そう、やはり銃を使ったドンパチは迫力があるし、分かりやすいし、何よりも楽しい。北野武をはじめとした役者陣がそれぞれゲームのキャラクターのように銃を撃ち、撃たれる。芸人らしいギャグライクな場面とシリアスの境界ギリギリで描かれるこのヤクザ劇は、次作・ビヨンドでより昇華される。

哲学や本質、そういった難しいことを抜きにして、この映画はシンプルに面白いのだ。計三作に渡るこのアウトレイジシリーズも、見せられているのはただの”ヤクザの喧嘩”であるのに、エンターテイメントとして、また北野武の映画として非常に面白い。

 

 

 

⑥キタノブルー


ソナチネをはじめとした中盤の北野映画を特徴づけるトーンの一つに「キタノブルー」があげられる。北野映画の特徴に「多くを語らない」「画(え)で魅せる」というものがあるが、それを究極的に突き詰めた結果が、このトーンに顕著にあらわれているとも言い換えることが出来る。

HANA-BIより

この「青さ」に至ったのは、撮影中に突然雨が降り出し、ファインダー越しの世界が青に染まったことからスタートしたとされている。また余計な情報をカットする北野映画の方向性と合致したことによって、たけし自身がこれを好んで使ったことから、北野映画の特徴の一つにあげられる。

 

 

北野映画が世界で高い評価を集めたのは、冒頭申し上げたように、彼が大御所的芸人の立ち位置に君臨していたことからではない。近年はほとんど見かけなくなくなった、アート性の強い印象主義的映画を長きに渡り撮影し続けてきたからだ。陳腐な言い回しで言うと「なんかいいわぁ」というものに帰結する。

またヤクザ映画と言えども、所謂「ヤクザらしい」大仰なものも、ほとんど存在しない。

ぜひ、女性にもキタノワールドを体感してほしい。


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