山梨の山野草・高山植物

3【山梨百名山】乾徳山

 

 

乾徳山(けんとくさん)

Date:6月27日
都道府県:山梨県
標高:2031M

金峰山、瑞牆山、国師ヶ岳などが連なる奥秩父連山の前峰に存在するのが、この乾徳山です。1814年に成立した江戸時代の書物「甲斐国史」によると、鎌倉時代に臨済宗の僧「夢窓疎石(むそうそせき)」が修行したとされ、およそ1300年頃から山岳信仰の対象とされました。

山梨県外の登山者においては、金峰山や大菩薩嶺などの人気・知名度には劣りますが、樹林帯、岩場、鎖場、ガレ場(※)などが揃った、登り応えのある山です。(※ガレ場=岩クズがゴロゴロと積み重なった場所)様々なサイトには「初心者~中級者向け」とされていますが、決して初心者向けの山ではありませんので注意が必要です。

この山の標高は、2031Mで、それほど高い山というわけではありません。この山よりも高い山は、この日本に数えきれないほど存在します。しかし、この山が見せつけてくる「高度感」(=足がすくむような高さを感じる感覚)は、なかなか経験できないものです。

 

そびえる岩場の連続

まず登りはじめは、車がギリギリ通れそうな一応の林道を歩き、”乾徳山登山口”に至ります。

左が林道、右が登山道

乾徳山登山口

見えてくるのは、整備されているとは言い難い登山道とガレ場です。

このようなガレ場は国師平に至るまで長く続き、景色にもあまり恵まれません。鬱蒼と茂った樹林帯に阻まれ、数々の植物が登山者を出迎えます。同じような景色を見ながら、徐々に標高を上げていきます。

道中で見つけた銀竜草(ギンリョウソウ)
腐生植物の一つで、別名をユウレイタケ(ソウ)と呼ぶ

そして、先述した山岳信仰の名残として、二ヵ所の水場があります。

錦晶水

こういった山の水は、夏場でも驚くほど冷たく、登山者の喉を癒します。(場所によっては飲めないこともあるので、事前に確認してください)そして、長い長い樹林帯を抜けると、国師ヶ原に至り、数々の奇岩が並ぶカヤトの原を抜けると、そこからこの山の謂わば「本当の登山」がスタートします。この地点まではガレ場と樹林帯の繰り返しでしたが、ここから鎖場がスタートし、高度を一気に上げていきます。

鎖場の連続。左側、赤い矢印の細い部分が登山道。

そうして標高をあげながら歩いていき、見えてくるのが遠くにある富士山です。富士山が見えても、山頂まではまだまだ急峻な鎖場を抜ける必要があります。

そして、この山における最大の難所とされているのが、山頂直下にそびえる「鳳岩」(おおとりいわ)です。この岩は、ほぼ垂直にそびえ立つ20M超の岩で、設置されている鎖を利用し、岩の隙間の足場を探しながら登ります。

鳳岩

鳳岩を登りきらんとする人たち
これまで歩いてきた稜線が後ろにある

そして、ついに辿り着いた山頂から見る景色は、恐怖で足がすくむほどの高度感があります。真下は急転直下に岩場がえぐれ、まさに”奈落の底”という感じがします。また、山頂のスペースが他の山と比較して、かなり狭いため、自分がピークに立っているという実感がもの凄く強い山でもあります。

この山における歩行距離は10キロほどですが、累積標高(※)は約1300Mです。これは大菩薩嶺などの二倍の標高です。(※累積標高:スタート地点から自分が登った標高)故に、この山はまったく初心者向けではありません。

しかし、この山で感じるその高度感は、なかなか巡り合うことのできない唯一無二の絶景です。かつて誰かがこの山に登ろうと思わなければ、この山は開かれなかったであろうし、人間の素晴らしさと恐ろしさを感じる乾徳山でした。

 

1 茅ヶ岳
2 大菩薩嶺

 


参考:「山梨百名山グレーディング表」やまなし観光推進機構
山梨百名山について:OMOTE TO URA

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