ART

OMOTE TO URAがすゝめる日本の本10選

 

最近、めっきり本を読まなくなった。というのは、小説などの物語を読まなくなったということだ。

本屋に足を運んでも探すのはビジネス書ばかりで、そこに空想の世界は当然広がっていない。

 

しかし思春期の頃は本をたくさん読んだ。僕が中学生の頃はまだスマートフォンなるものは存在しなかったし、僕の生きる世界の外に、また別の世界が広がっているということを教えてくれたのは音楽やファッションや「本」だった。

 

さて、今回はOMOTE TO URA・ワダアサトがすゝめる10冊の日本の小説やエッセイを紹介したい。

 

ナイフ

何もかも憂鬱な夜に

向日葵の咲かない夏

東京奇譚集

星々の悲しみ

本当はちがうんだ日記

葡萄が目にしみる

まく子

すべてがFになる

ゴランノスポン

 

 

 


⑴ナイフ

重松清・1997

“「悪いんだけど、死んでくれない?」ある日突然、クラスメイト全員が敵になる。僕たちの世界は、かくも脆いものなのか!ミキはワニがいるはずの池を、ぼんやりと眺めた。ダイスケは辛さのあまり、教室で吐いた。子供を守れない不甲斐なさに、父はナイフをぎゅっと握りしめた。失われた小さな幸福はきっと取り戻せる。その闘いは、決して甘くないけれど────”

(引用:新潮社公式HPより)

 

この「ナイフ」は五篇からなる短編集で、90年代後半には社会現象化していた「いじめ」をテーマとして扱った作品だ。

重松作品の特徴は、分かりやすい描写を分かりやすい言葉で書く、というところにあると思っているのだが、その描写は実にうまい。しかしこの「うまい」は「巧い」ではないのだ。

この物語で紡がれる5つの家族は、皆、生きている。痛みや辛さを受け入れながら、生きている。「命の大切さ」とは決して陳腐なものではないし、ここに書かれた言葉たちは一つの厭(いや)らしさも持たずに、心にすっと落ちる。

 

★その他のおすゝめ
(エイジ / ビタミンF / 青い鳥 / 十字架 / 疾走)

 

 

 


⑵何もかも憂鬱な夜に

中村文則・2012

“施設で育った刑務官の「僕」は、夫婦を刺殺した二十歳の未決囚・山井を担当している。一週間後に迫る控訴期限が切れれば死刑が確定するが、山井はまだ語らない何かを隠している―。どこか自分に似た山井と接する中で、「僕」が抱える、自殺した友人の記憶、大切な恩師とのやりとり、自分の中の混沌が描き出される。芥川賞作家が重大犯罪と死刑制度、生と死、そして希望と真摯に向き合った長編小説。

(引用:集英社文庫公式HPより)

 

人という生き物は生きているから、どうにも前に進めない時や、とてつもない絶望や失望を味わうことがある。

しかしこの作品は、「生きる」という根源的なものをえぐりだし、そこに異議を唱えることができないほどの「理由」を与えてくれる名著だ。

「自分は一体何者なのか」「なぜ生きなければならないのか」。

それらを冷たく、しかし深く、人間の行為そのものから目を背けず、真摯に書き下ろされたこの本は当時の僕に大きな影響を与えた。

 

本にエンターテイメント性、つまり娯楽性を求めている者には向かないが、人生の指針のようなものを求めている方には深く響くだろう。

 

★その他のおすゝめ
(掏摸 / 銃 / 土の中の子供 / 教団X)

 

 

 


⑶向日葵の咲かない夏

道尾秀介・2005

”夏休みを迎える終業式の日。先生に頼まれ、欠席した級友の家を訪れた。きい、きい。妙な音が聞こえる。S君は首を吊って死んでいた。だがその衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまう。一週間後、S君はあるものに姿を変えて現れた。「僕は殺されたんだ」と訴えながら。僕は妹のミカと、彼の無念を晴らすため、事件を追い始めた。あなたの目の前に広がる、もう一つの夏休み。”

(引用:新潮社公式HPより)

 

全二作が重たいものだったので、こちらをご紹介。

この作品は読んだことがある方も多いと推察するが、何よりも書いておきたいのは「エンターテイメントとしての小説」においては突き抜けているということだ。

大衆受けする作品か?と問われれば、首を縦に振ることはできないが、ミステリというカテゴリーにおいては突出した作品であると考えている。つまり本作は「狂った人におくる狂気のミステリー」である。

サイコパスが登場しないサイコパスもの(それも作者本人が)、と言えば分かりやすいかもしれない。

 

★その他のおすゝめ
(ラットマン / 竜神の雨 / 月と蟹)

 

 

 


⑷東京奇譚集

村上春樹・2005

“肉親の失踪、理不尽な死別、名前の忘却…。大切なものを突然に奪われた人々が、都会の片隅で迷い込んだのは、偶然と驚きいみちた世界だった。孤独なピアノ調律師の心に兆した微かな光の行方を追う「偶然の旅人」。サーファーの息子を喪くした母の人生を描く「ハナレイ・ベイ」など、見慣れた世界の一瞬の盲点にかき消えたものたちの不可思議な運命を辿る5つの物語。”

(引用:新潮社公式HPより)

 

僕は俗に言う”ハルキスト”ではない。しかし高校の頃はよく読んだ。その中でどうしても頭の片隅にこびりついて離れないのが、この「東京奇譚集」である。

”神のこどもたちはみな踊る”もそうではあるが、これらに収録された幾つかの短編は、非常に気持ちが悪い。気持ちが悪い、というのは肉体的な気持ち悪さではない。

淡々と、実に淡々と文章が紡ぎ出されていくその様が異様で、実にドライなのだ。だからすべての登場人物に心がないように感じられる。

よく小説で謂われる「第三の視点」以上に、俯瞰して物語を機械的に描写している。

村上作品は総じて「奇異」なのである。

 

★その他のおすゝめ
(神のこどもたちはみな踊る / スプートニクの恋人 / カンガルー日和)

 

 

 


⑸星々の悲しみ

宮本輝・2008

”喫茶店に掛けてあった絵を盗み出す予備校生たち、アルバイトで西瓜を売る高校生、蝶の標本をコレクションする散髪屋―。若さ故の熱気と闇に突き動かされながら、生きることの理由を求め続ける青年たち。永遠に変らぬ青春の美しさ、悲しさ、残酷さを、みごとな物語と透徹したまなざしで描く傑作短篇集。

(引用:「BOOK」データベースより)

 

まず、この「星々の悲しみ」という美しいタイトルをつけた宮本輝の才にただただ頭が下がる。

この本に書かれているのは、いくつかの短編であるが、この情景描写は異様なリアリズムを伴って読者に迫ってくる。

人の「生」を描こうとする時、彼は「死」や「病」を描くことで、対照的な「生」の美しさを描く。死とは涙の材料ではなく、生を照らす一つの役割としてピックアップされていることが素晴らしい。

思春期の多感な学生にこそよんでほしい一作だ。

 

★その他のおすゝめ
(青が散る / 約束の光 / 水のかたち)

 

 

 


⑹本当はちがうんだ日記

穂村弘・2008

”自意識が強すぎて身のこなしがぎくしゃくしている。初対面の人に「オーラがない」と言われてしまう。エスプレッソが苦くてのめない。主食は菓子パン。そんな冴えない自分の「素敵レベル」をと上げたいと切望し続けてはや数十年。みんながらくらくとクリアしている現実を、自分だけが乗り越えられないのはなぜなのか?世界への違和感を異様な笑いを交えて描く、めくるめく穂村ワールド。”

(引用:集英社文庫公式HPより)

 

軽快な筆致で、穂村弘の現実との向き合い方を描く。

エッセイとしては「エッセイ」そのものの面白さ、軽快さが全てここに詰まっている。

僕が説明するより、数百円出して読んだ方がいい。

 

★その他のおすゝめ
(世界音痴 / にょにょにょっ記 / 蚊がいる)

 

 

 


⑺葡萄が目にしみる

林真理子・1984

”葡萄づくりの町。地方の進学校。自転車の車輪を軋ませて、乃里子は青春の門をくぐる。淡い想いと葛藤、目にしみる四季の移ろいを背景に、素朴で多感な少女の軌跡を鮮やかに描き上げた感動の長編。”

(出典:角川文庫公式HPより)

 

上の紹介文にある「地方の進学校」とは私の母校であり、私も林真理子と同じ高校を出ている。

だからと言って、特別な感情は一切わかないが、この作品は秀逸である。

 

私の通っていた高校はまさに葡萄畑と桃畑に囲まれた「地方の進学校」そのもので、その中では当然のように隠されたルーティン的カースト制度や、無言の他者からの圧力、地元愛的な田舎社会のシステムが存在していた。そしてそれは今もなお存在している。

私はそんな鎖のような制度はまっぴらだし、不必要であると考えているが、こういった価値観はまだまだ残っている。

 

この作品は山梨の「日○高校」で繰り広げられる人間関係と、その情景を端的に描写し、背景に鬱屈した感情や挫折を描いている。

 

※ちなみにこの本の装丁(上図参照)は、最新のものであり、これはいただけない。デフォルメされすぎているし、主人公はこんな若々しい女性ではない。

★その他のおすゝめ
(他を読んだことがないため不明)

 

 

 


⑻まく子

西加奈子・2016

”少女の秘密が、ぼくの世界を塗り替えた。信じること、与えること、受け入れること、そして変わっていくこと…。これは誰しもに宿る「奇跡」の物語。 ”

(引用:福音館公式HPより)

 

一言で言ってしまえば「瑞々しい」ということに尽きる。

西加奈子作品は、常に読む側が信頼している。彼女の生み出すファンタジックで、リアリティある不思議な世界を、異を感じることなく受け入れられる。

彼女の作品はうまく言葉にできない。それはこの物語を通して、僕がその意味を「感受」しているからだ。

 

2019年に映画化されるとのことだが、どうこの物語が映像に昇華されているのか、楽しみに待ちたい。

 

★その他のおすゝめ
(窓の魚 / 炎上する君 / サラバ!)

 

 

 


⑼すべてがFになる

森博嗣・1996

孤島のハイテク研究所で、少女時代から完全に隔離された生活を送る天才工学博士・真賀田四季。彼女の部屋からウエディング・ドレスをまとい両手両足を切断された死体が現れた。偶然、島を訪れていたN大助教授・犀川創平と女子学生・西之園萌絵が、この不可思議な密室殺人に挑む。新しい形の本格ミステリィ登場。

(引用:講談社公式HPより)

 

この作品が出版されたのは96年のこと。徐々に普及してきたインターネットのことを2019年の今まで対応できるだけの内容で書き下ろしたことがまず凄いことではないか。

ロジカルであろうとする人は多いが、だからこそそんな人々を満足させるだけの伏線と、思考が描かれている。

とにかくミステリものは「面白い」ということが大事ではないか、と考えているが、読みごたえがあってただただ純粋に面白いのが特徴。

作者である森博嗣は恐らく、というか確実に変態で変人であると思う。

 

★その他のおすゝめ
(まどろみ消去 / つぶさにミルフィーユ /  「やりがいのある仕事」という幻想)

 

 

 


⑽ゴランノスポン

町田康・2011

”最高ってなんて最高なんだろう。僕らはいつも最高だ────。十一年前の秘蔵小説から最新作「先生との旅」(発売当時)まで、六年ぶりの待望短編集は七篇全部凝縮マチダ!”

(引用:新潮社公式HPより)

 

これはとんでもない作品であることを書いておきたい。ユーモアと皮肉、皮肉、皮肉、皮肉に次ぐ皮肉。

「ゴランノスポン」は「ご覧のスポンサーの提供で…」ということだろう。つまり、あの場面はエンタメ世界から一気に現実に引き戻される瞬間である。

彼の作品の根底には、隠しきれな厭な卑しさ、生々しさがある。この「ゴランノスポン」は短編集でありながら、全ての物語が強く強く記憶に残っている。

そしてたった数行の言葉の羅列で「ゾッ」とする恐怖と皮肉を与える。

みんな、現実を虚像で隠して生きている。

 

★その他のおすゝめ
(告白 / 猫にかまけて / 生の肯定 / 供花)

 

 

 

THE BOOK SHOWS THE UNKNOWN WORLD.
THERE IS A WIDE WORLD SPREADING THERE.


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