Rock

OMOTE TO URA的2020年ベストトラック

「OMOTE TO URA的2020年ベストアルバム」に乗じて、私が今年よく聴いた楽曲を、Apple Musicの「REPLAY 2020」を基にご紹介していきたい。正式なコンテンツとしては成立していないので、興味のある方だけお読みください。あくまで”今年よく聴いた”というもので、2020年の楽曲をピックアップしているわけではありません。

2020年ベストアルバムはこちら

 


1  Like a Stone / Audioslave

クリス・コーネルを主体とするAudioslaveのファーストに収録された、彼らを代表するロックチューン。個人的にクリスというヴォーカリストが非常に大好きなのだが、この哀しさとロックの情熱を双方秘めたような「Like a Stone」は今年のカラーによく似合っていた。トム・モレロのソロ、トレモロによる揺らぎの感傷もさることながら、クリスのヴォーカリストとしての才能を凝縮したこの楽曲は、「名曲」と言うにはあまりに軽薄。また静から動へ至るそのプロセスは、命を燃やしながら花開く植物のようにも思え、聴けば聴くほどこの楽曲が持つパワー(必ずしもポジティヴではない)に打ちひしがれる。

 


2  Ain’t Talkin’ ‘Bout Love / Van Halen

やはり、2020年といえばVan Halenのエディが亡くなったことの衝撃だけが残る。幸いにも、新型コロナウイルスによる逝去というわけではないので、そこだけは唯一の救いであるが、それにしても悲しい。エディがシーンに現れる前と後では、ロックギター界は本当に大きく変わった。もちろんタッピング奏法を世に広めたことなどの、謂わば技術的分野における革命的手法も素晴らしい。だが、それまでの数多のギタリスト達は「格好良く弾く」ということがそもそもの前提として存在していたのに対し、エディの弾き様は、あまりに「楽しそうに弾く」という姿勢に満ちていた。時代性と放つ楽曲そのものによって、時に商業主義的である、あるいは90年代オルタナ勢から批判の対象となったが、やはりそれでもエディ・ヴァン・ヘイレンというギタリストは、途轍もない輝きを放っていた。

 


3  Blue Monday / New Order

ストイックに繰り出されるリズミカルなグルーヴに、この時期のサウンドを象徴するエレクトロニカ系シンセの音色。楽しいのか、不安なのか捉えようのない不思議な曲調とサウンド。間違いなくUKのポスト・パンク(もはやニューウェイヴと言ってもいいかもしれない)を代表するNew Orderの「Blue Monday」。前身バンドJoy Divisionのヴォーカリスト、イアン・カーティスの自殺を楽曲したものであるが故に、16分で刻むドラムスが焦燥感と動悸を喚起しているかのよう。マッドチェスター・ムーヴメントを牽引したHappy Mondaysのバンド名の由来はこの曲だったとどこかで読んだ記憶がある。この曲をよく聴く必然性はないはずなのだが、潤いのない2020年には奇妙に合っていたような気がする。

 


4  月光 / 鬼束ちひろ

ドラマTRICKの熱狂的ファンということもあり、いつ聴いても常に良いと思える楽曲。「I am God’s child」という突飛な歌い出しからは想像もつかぬ美しいメロディと、鬼束の聡明な声の裏側に潜む狂気と深みを感じられる楽曲。所謂J-POP的に進行していくメロディではあるが、TRICKのくだらなさとこの楽曲のギャップが素晴らしく、何度も繰り返し耳を傾けてしまう。個人的には完全なる夜、あるいは深夜の曲なのだけれど、皆さんにとってはどうだろう。

 


5  Woman / Wolfmother

今年はKyussを経由したストーナーロックやデザートロックをよく聴いた一年であったが、その中でもリフを主体としたWolfmotherの楽曲は非常に多く聴いた。盲目的にジョシュ・オム派生系ロックバンドが好きなので(QOTSA、TCV等)、あくまでもハードロックという枠組みの中で、いかにリフを多様化させていき楽曲を構築していくか、というところの面白みにグッとくる。また、一般的にBlack Sabbathはヘヴィメタルやブラック・メタルの始祖とされることが多いが、いずれもこういったストーナー系、あるいはパンクにまで影響を大きく及ぼしているという認識ができた。今でこそサバスはクラシカル中のクラシカル、もはや知らない人など存在しないバンドであるものの、もう一度深く聴いてみたいという想いになった。

 


6  Hysteria / MUSE

UK出身のMuseの楽曲もよく聴いた。というのも、ある意味においてまったくUKらしくない態度というのが、非常に面白く、サウンドも極端にヘヴィである様が、自分自身を鼓舞してくれる。この曲はヘヴィで、戦車のようなアンサンブルを持つ楽曲ではあるが、一方ではキャッチーにまとめられている点も好きだった。しかしUSにおけるKORNフォロワーのようなヘヴィネスとは根本が違うので、やはりイギリスのロックバンドだよなーという漢字がする。このアイデンティティはRoyal Bloodのようなロックバンドに継承されつつも、当然ミュージック・シーンのど真ん中ではないので、変わらないで邁進してほしいなと思っている。2015年以来、オリジナルは出ていないので、来年に期待したい。

 


7  Move / Saint Motel

一体、なぜに売れないのか、不思議でしょうがないこのバンド。エレクトロニカを掠めているのに、ヘヴィかつアッパーな印象を持っている。このジャンルは昨年グラミーを獲得したCage the elephantが牽引しているような印象も受けるが、一方ではそれ以前よりGrouploveなどによって局所的な盛り上がりを見せている。そもそもジャンルそのものがマイナーという事実もあるけれど、どんなに技巧を凝らしたノリの良いポップスよりも遥かにノれる。また、イギリスがThe 1975を主体とした綺麗目のポップス的な立ち位置であるのに対し、アメリカの現在地を示す重要な道しるべであると思っているのだが、なかなか表に出てこないなぁ。

 


8  氷の世界 / 井上陽水

今の若い人、といっても私も十分若いんだろうけど、いずれもその世代からは「何か癖の強い昔の歌手」みたいなイメージのある井上陽水。恐らく今の中学生、高校生では知らないことも不思議ではなくなったミュージシャンだが、70年代から80年代にかけての陽水は凄まじい。特にこの「氷の世界」が収録された同名アルバムは、日本ではじめてミリオンヒットを獲得したアルバムで、そこで鳴らされていたのは明確なロック。その中でもこの楽曲はファンクロックの要素を持つもので、その中を陽水の日本語が流れていくというアンバランスさや、不均衡感がとても良い。また、ニヒルな視点、あるいは社会を切り取る視点にも富んでおり、それが形式だけのポーズにならないのも、本当に凄い。またライブにおける演奏は本当に凄まじく、数々の海外ロックバンドに匹敵すると、真剣に考えている。YouTubeで観れるので是非。

 


9  Genocidal Humanoidz / System of a down

突如として新曲をリリースしたSOADだが、個人的にはProtect the Landよりこちらの方が好み。相変わらずポリティカルでリベラルな思想を持つ強烈なロックバンドではあるが、音楽こそ本当に格好いい。同じような政治思想を持つRATMは、近年動きがないのは残念だが、たった二曲のリリースで世界中のロックファンが熱狂してしまうこの煽動力には驚きを隠せない。またMV(Protect the Land)もなかなか強烈で、明確にアルメニアという国が抱える暗澹と、世界情勢を左の視点から強烈かつシニカルに描き出している。私は基本的にロックミュージシャンの様々な政治思想、またその周辺が抱くプロパガンダは冷めた目で見ている立場だが、楽曲が全てを示すと思っている。まぁ、いずれも日本のロックメディアの画一的な視点には辟易しているが、それはまた別のお話。

 


10 Shine A Little Light / The Black Keys

昨年リリースされたアルバムの一曲目に据えられたナンバーではあるが、今年もよく聴いた。大まかにカテゴライズするならば、間違いなくHRということになるだろう。が、このアダルトな香り、大人に向けられた大人の為のHRというのがたまらなく素晴らしい。HR/HMなんて、もう誰も聴いていない。オシャレなカフェで流すにはあまりに不向きだし、ドライブで誰かと聴くにしても、そもそも知られていないから無理だ。本当はロック最高だろ!って言いたいけれど、世の中の流れはそうなっちゃいない。米津とか聴いていれば、何となくコミュニティの共通言語にはなる。でも、やっぱり個人的にはオールドスクールなロックが好きなんだな、と再認識させてくれる楽曲でもあった。モードに持ち込むならラフ・シモンズがやったJoy Divisionが限界の古さだけど、いつかIron Maidenとか笑っちゃうようなバンドをモードへ昇華したいな、と思ってみた。

 


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ワダアサト
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