ROCK

OMOTE TO URA的2019年ベストアルバム 邦楽編

 

 

2019年もいよいよ終わりに差しかかり、2020年が始まろうとしている。そこで今回は、2019年のベストアルバム[邦楽編]をOMOTE TO URAが選択していきたい。[洋楽編]はこちら

この行為は、自分がどのような音楽を好んで聴いてきたのか、あるいは「今」の自分を知るということにおいて、大きな意味を持つ。CDが売れない、ロックは終わった、様々なネガティブな印象が連なる中、多くの皆様の音楽選びの参考になれば幸いです。

Apple Music Playlist by OMOTE TO URA


【選択の条件】

・2019年1月1日から2019年12月2日(記事執筆現在)までに発売されたミニアルバムを含むオリジナルアルバムとする。
・[邦楽編]は基本的に日本国内のミュージシャンで、掲載は順不同とする。

【選択の基準】

・知名度の高低や、音楽フリークからの評判、トレンドなどはあまり考慮せず、あくまで自分自身が良いと感じたものとする。
・「良いと感じた」というのは、何度も繰り返し聴けることや、アルバム全体の流れにまとまりがあり、違和感を感じないもの。


 

 


山崎まさよし / Quarter Note
release:2019.11.13

一曲目に配置された「Regression」から既に音の厚さと立体感にまず驚かされ、良いアルバムであることを確信できる。特に「音の厚さ」に関連して言えば、鳴り物の数が多いわけではないのに、丸みのある立体感は見事。前時代的フォーク感を感じる訳でもなく、アップデートされたニュアンスのアコギが優しく包んでくれる。そしてそれらと絡みつくように、しかし時々違和感を感じさせながら山崎まさよし唯一無二の声が広がりを見せていく。

正直なところ、近年の山崎まさよしが音楽フリークに評価されているかと問われると首を縦には振れないが、個人的には素晴らしいアルバムだと感じました。

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カネコアヤノ / 燦々
release:2019.9.18

特別なことは何も起きず、技術的にどこかが突出しているわけでもない。歌唱力がずば抜けて高いわけでもない。しかし、只々日常を切り取るだけでこんなにも愛おしいアルバムが生まれるのかと驚いた。鮮烈でありながら、輪郭のぼやけた写真のような印象を受ける。

カネコアヤノの内部にある暗く静謐な精神のようなものではなくて、もっとポップでふとした瞬間を鮮やかに切り取った傑作ではないでしょうか。

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Suchmos / THE ANYMAL
release:2019.3.27

サイケデリック・ロック、あるいはポップをその音楽の一つの要素にするバンドはTame Impalaなどが思い浮かぶが、そのアプローチは多種多様だ。今作はビートルズがリボルバーを発売した当初からのサイケデリック・ロックに端を発し、既存の生温いファンを置いてけぼりにする姿勢。これこそまさにロック。「STAY TUNE」で目覚めたファンたちは絶望したに違いない。

中身はまるでピンク・フロイド的でボズ・スキャッグス的でゆら帝的で、60’sの原色ヒッピーカルチャーとウッド・ストックに人々が熱狂していた頃を想起させる。個人的にはこの路線で行くなら、評価は確立されたものと考えている。

日本のロックバンドがこういう音を鳴らしていてくれることは、ロックンロールそのものにとっての希望であり、野望でもある。そしてこういうグルーヴを持つロックバンドが「日本語」で歌を歌ってくれることが嬉しい。現代社会の急速な成長と、そのスピード感の為に消費される音楽とは真逆の位置にある蒼き傑作だと思います。

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B’z / NEW LOVE
release:2019.5.29

合わせて1000万枚のセールスをあげたベストアルバムの後に「Brotherhood」「ELEVEN」をリリースした時のように、あるいは「The 7th Blues」の長髪時代のように「好きな音を鳴らしている」ということが、このアルバムからは伝わる。このバンドが今もなお、地に足をつけたハードロックを鳴らしてくれていることがただただ嬉しい。そんなアルバムだ。

AC/DCやヴァン・ヘイレンなどのリフが主体となる強いロックバンド的フック、更にはエアロに源流を見出すことの出来るブルース・ロック、キング・クリムゾンやレッド・ツェッペリン的な冗長ロックナンバーもあり、それらがB’zの持つB’z流様式美で包まれている。泥臭くも古きロックを爆音で聴きたくなる。否定派もしっかり熱い否定をしてくれていることが素晴らしい。

松本の「俺は松本孝弘だぞ」トーンと、稲葉の「僕は稲葉浩志だよ」ヴォーカルが圧倒的な求心力を持って、リスナーに届いていく。ロックは確かに下火になり、ワールドチャート、ジャパンチャート共にランクインはしない。しかし、このバンドが魅せる「ロック」は確実な頑固さと強靭な意志をもって、前に突き進む。

 

 


スピッツ / 見っけ
release:2019.10.9

日本ロック・ポップス界の希望、光。本当に不思議だ。優しくも強いそのスタイルで、演奏だけで聴かせることが出来る作品。草野マサムネの声は数年前と比較して明らかに渋みを増し、変化していることが如実に感じられる。90年代のスピッツがメンタルヘルスやサブカルへのカウンターだと仮定するならば、今作はヘルシーな社会へのカウンターだ。

90年代のスピッツが大ヒットをかましていた時───「ハチミツ」「インディゴ地平線」当初よりも遥かにロック感が強くなり、ロックバンドとしてのグルーヴを感じられる快作で、メロディがどうこうというよりも、バンド感、ライブ感を強く感じる作品。J-POPの括りに入るスピッツというよりも、結成30年を迎えた実力、矜持共に老齢を迎えた男たちが魅せる世界。見事でした。

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サカナクション / 834.194
release:2019.6.19

以前どこかで書いたことがあるが、サカナクションはジャズ、ロック、テクノなどあらゆる音楽ジャンルのファンを納得させられるだけのパワーを持ったバンド。そして今作では、一音一音が慎重にレイヤーされていき、サカナクション及び山口一郎のストイックな美学を感じることが出来る。

洗練されたシティポップ、AOR的サウンド、都会的な音像の中に土着的な要素を絡めつつ、既発曲すら新鮮に受け取ることができる。聴く度にアンパンマンの顔のように「既存」が復活し、噛み続けても美味しい。

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BABYMETAL / METAL GALAXY
release:2019.10.11

「これはメタルか否か」という議論には、目的がない。「メタルではない」「立派なメタルだ」という結論に達しても、それが何なのだろうという印象を抱く。音楽という概念そのものの、聴いていて楽しいとか、カッコいいとか、心地いいとか、そういう感情を思い出させてくれる作品。確かにメタル寄りではないものの多様性に富み、ジャンル:BABYMETALを確立したアルバム。

メタル本流であることに必然性はないし、打ち込みを多用していても、音楽は楽しければそれでいい。まさしくカオスだが気付けば繰り返し聴き、なおも彼女たちの音に虜になっていく。私は彼女たちの熱心なリスナーではないからこそ、示唆に富み、J-POP的フックの中でメタルを楽しめる。沼です。

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ウルフルズ / ウ!!!
release:2019.6.26

兎にも角にも実直さを感じられるアルバムだ。ウルフルケイスケが参加していないが、文句なしに素晴らしいアルバム。2014年に発売されたアルバム「ONE MIND」以降、ウルフルズは大きな闇のような空間に飲み込まれていたような気がするが、今作ではその闇のようなものが晴れた感じを受ける。

歌詞もONE MINDに次ぐ真っすぐさで、正直に心に入ってくるアルバム。エレクトロニカを効果的に使用した一曲目から、抒情的なカッティングの次曲への流れ、ウルフルズの内部にある軋轢を吹っ飛ばしてくれるソウルフルで愛の詰まったアルバム。J-POPの歌詞にありがちな、底抜けに明るい気持ち悪さは一切ない。トータス松本をはじめとするメンバーが、毎日を実直に積み重ねることで生まれてくるアルバムだと思います。

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THE YELLOW MONKEY / 9999
release:2019.4.17

はっきり言って、楽曲単体は弱い。キラーチューンや妖しいグルーヴは見られない。しかしその評価ポイントは恐らく的外れなのだろう。というのも、このアルバムは「盤」として考えられるべきだからだ。そしてそう考えた際、私が個人的に今ハマっているガレージ~オルタナリバイバルというポイントで、まさに素晴らしいと言える。ドライでざらついた印象のあるロック、哀愁漂う老いたロック。

確かに10代~20代の若者に合うかと問われれば、首を縦には振れないが、言ってしまえばウィスキーの魅力が若者には分からない、ということと同じだ。あと、音質が素晴らしい。ジャパニーズ・ガレージ・ロック、ここに極まれり。

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佐野元春 / 或る秋の日
release:2019.10.9

抒情詩のように紡ぎ出される佐野元春流のAOR的アルバムで、小説を読むかの如く、一曲一曲の情景描写が只々美しい。実質コヨーテバンドの演奏ではあるが、このアルバムを聴くと佐野元春という人物がまさに唯一無二の存在であることが分かる。

秋になれば葉が枯れるが、人間も同じように枯れていく。しかし枯れることを恐れず、「老い」の美しさに焦点が当たっていて、はからずも心にグッとくる。「アルバム」としてはコンセプト・アルバム的で、軸の太い印象を受ける。若さゆえに理解できないことさえも肯定してくれるような優しさ。人の死、悲しみ、失意、再生などの人生に絶対に存在する対象を、「秋」を背景にして流れていく。

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いかがだったでしょうか。個人的には2019年はキャリアのあるミュージシャンたちの新作が冴えているように思いました。スピッツは初期よりも断然ロックっぽさが増して、生々しいロックを感じられました。B’zは完全に消滅しかかっているハードロックを想起させ、歪んだ骨太なロックを聴かせてくれました。サチモスからはプログレッシブ・ロックや60’sサイケを。イエモンからはUSガレージロックを。どれも素晴らしいアルバムでした。

日本のミュージシャンたちが、ロックや音楽の世界を広げてくれること。これは本当に素晴らしいことだと思います。皆様も是非、たくさんの音楽に触れてみてください。


この度はコンテンツをご覧いただきありがとうございます。
次回もよろしくお願いいたします。

ワダアサト
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2 Comments

  1. 読ませる文章で、素晴らしいレビューでした。音楽的観点から語りすぎず、文学的観点からも語りすぎない、ちょうどいい塩梅の「聴きたくなる文章」だと思います。

    ところでサチモスの新譜、B’zの新譜はもっと多くのコンテクストでもって語られるべきかなと思います。サチモスの空気感はまさに60’s以降の初期プログレを彷彿とさせ、B’zは70〜80’s以降のHRを彷彿とさせるアルバムでした。B’zはあまりにも大きなバンドとなり、ポップスマーケットでの評価(むしろ、その評価の方が高い)が高いので、音楽的観点から語られることが意外に少ないような気がします。そういう意味において、真摯な姿勢でのレビューは珍しいのです。

    久しぶりにB’zの新譜をサマソニに影響を受けて買ったものですが、まだこんなにもカッコいいロックバンドが日本にもあったんですね。驚きです。いいレビューをありがとうございます。

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